瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

水村美苗『続明暗』の文庫本(2)

 二刷の平成10年(1998)9月以降のカバーと三刷のカバーの比較の続きから。
 表紙折返しの右下「カバー装画 安野光雅」とあるのは共通。これは新潮文庫夏目漱石作品と同じである。
 カバー裏表紙折返し、二刷は新潮文庫『明暗』の広告で、津田青楓装幀『色鳥』によるカバーである。右半分が切除されているので詳しい紹介は完全なものを見る機会があった折に果たすこととしたい。下部に「カバー印刷 錦明印刷」その右に「デザイン 新潮社装幀室」とあるらしい。三刷の上部には「――――新潮文庫――――/水村美苗の本|」として「続明暗/本格小説(上・下)」とある。下部には「カバー印刷 錦明印刷  デザイン 新潮社装幀室」とある。

本格小説 上

本格小説 上

本格小説 下

本格小説 下

本格小説(上) (新潮文庫)

本格小説(上) (新潮文庫)

本格小説(下) (新潮文庫)

本格小説(下) (新潮文庫)

 現在、新潮文庫で絶版になっていない水村氏の作品は『本格小説』だけであるらしい。
 裏表紙、左上にバーコード2つ、その下、中央の横線の上に「定価:本体552円(税別)」、右上の横組み11行(1行16字)の紹介文など一致、横線の下、左寄りにISBNコード/Cコードがあるが、三刷では13桁になっていて字も一回り小さくなっている。
 背表紙、二刷は小豆色(というか茶色?)地に白抜きで、上部に標題「明  暗」中央やや下に作者名、下部、角切の短冊形に白く抜いてその中に黒のゴシック体で[な 1 50]そのすぐ下白抜きゴシック体「新潮文庫」最下部黒地に白抜きで「\552」。三刷も文字は同じなのであるが白抜きではなく全て黒で、地色はクリーム色(褪色しているか)で、整理番号は[み 28 2]になっている。
 奥付を見るに、増刷発行日の他は、二刷に「振替」とあったところが三刷ではHPアドレスに変わっているくらいしか異同はないのだが、標題の右下の整理番号が二刷「な-1-50」が三刷「み-28-2」になっている。
 「な-1」とは、夏目漱石である。確かに小豆色地の背表紙に白抜きの標題、というのは夏目漱石の作品のカバーに共通の装幀である。すなわち当初『続明暗』は夏目漱石の作品に準ずる形でその「50」番(漱石作品がこれまでに49種も出ていたとは思えないから、絶対に使用されない番号ということで50にしたのだろうか)を与えたのであろう。しかし水村氏の他の作品も新潮文庫に収録するに当たり、やはり水村氏の番号「み-28」に統一するべきだ、ということになったのであろうか。
 増刷のペースからして、意気込んだほど、というか『明暗』ほどは、売れなかったらしい。夏目漱石作品の正統な続編としての位置付けが揺らいで、ついに絶版に至ったものでもあったろうか。分からないけど。(以下続稿)