瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

森鴎外『舞姫』の文庫本(11)

・角川文庫704『舞姫うたかたの記』(7)
 角川文庫704『舞姫うたかたの記』については、2011年3月6日付(01)に改版四十四版・改版四十八版、2011年3月8日付(02)に改版四十四版・改版四十八版と改版四十七版(なか見!検索)、2011年3月10日付(03)及び2011年3月17日付(04)に改版八版、2013年1月31日付(07)に改版八版・改版二十九版、2013年4月21日付(09)に改版三十四版・改版四十四版・改版四十五版を取り上げた。
 奥付には共通して「昭和二十九年六月三十日 初版発行/昭和四十二年七月三十日 三十版発行」の2行があって3行めにそれぞれの版の発行日。これまで見たカバーは3種で、頁数は158頁で同じだが改版八版について述べたところに詳述したように、奥付には反映されていないが途中で改版されていて本体は2種類である(もちろん細々した異同は除いて)。以下、これまでに私が見たものを列挙して置く。
 ここに今後見ることが出来たものも、追加することとしたい。そこで早速、従来見たものとは異なるカバーの掛かった改版三十五版を補って置こう。というか、改版三十五版を見たので今回、改めて整理して置こうと思い立ったのである。
内藤健二のカバー(158頁)
【改版八版】昭和四十七年五月三十日改版八版発行・¥120
【改版二十九版】昭和六十一年七月十日改版二十九版発行・定価220円
・「カバー写真東宝提供」のカバー(158頁)
【改版三十五版】平成元年三月三十日改版三十五版発行・定価262円
・奥村靫正のカバー(158頁)
【改版三十四版】昭和六十三年十二月二十日改版三十四版発行・定価262円
【改版四十四版】平成九年六月十日改版四十四版発行・定価340円
【改版四十五版】平成十一年四月二十日改版四十五版発行・定価340円
CLAMPのカバー(158頁)
【改版四十七版】平成二十年五月十五日改版四十七版発行・定価362円
【改版四十八版】平成二十年八月十日改版四十八版発行・定価362円
 この順序にしたのは、私の見た奥村氏のカバーの掛かったうちで最も古い版は改版三十四版だが、カバーは消費税導入後のものであり、東宝提供写真のカバーより早いかどうか、分からないからである。
 東宝映画「舞姫 Die Tänzerin 」が平成元年(1989)6月3日公開で、東宝提供写真のカバーが出回っていた時期は、平成元年(1989)に限定されるであろう。
 奥付には反映されていないが改版二十九版と改版三十四版の間に改版がなされている。映画の撮影は昭和63年(1988)だから、時期的に映画公開を見越しての改版の可能性もあるが、それとは関係なしに改版が行われ、それに伴って内藤氏から奥村氏への改装がなされた可能性も、考えられる。私はこっちの方がありそうだと思っているのだけれども、消費税導入前の奥村氏のカバーが出て来ないことには、その証明は出来ない。
 そして、角川文庫704の末期に掛かっていたCLAMPのカバーには「©2008 CLAMP」とあるので、最後の増刷がなされた平成20年(2008)に掛けられたものということが分かる。
 そうすると、奥村氏のカバーは平成1桁から10年代の約20年程掛かっていたことになる。たぶん。すなわち、仮に奥村氏のカバーが昭和末年まで遡るものだとしても、そのカバーの大半は、東宝提供写真のカバーよりも後のものの訳だから、一応この順序で整理して置こうと思ったのである。
 この点を、今後の諸版探索の目標として設定することとしたいのだけれども、とにかく次回は、東宝提供写真のカバーの掛かった改版三十五版について、改版三十四版と改版四十五版と比較しつつ、メモして置くことにする。(以下続稿)