主人公田所君子の母は双生児の姉娘です。昨日示した記述からも明らかでしょう。
何故、こんなにも明瞭に記述されているのに、山下氏・細川氏は取り違えてしまったのでしょうか。
これは、9月28日付(03)の最後に触れたように「ラストシーン、最後の一文」で「全ての事情が明白になるの」ですが、この「最後の一文」によって姉妹の関係が混乱させられてしまったためです。そのくらい衝撃的なラストなのですけれども、ここを読み違えてしまってはまるで「真相」に辿り着けていない訳で、どうも不安にさせられてしまうのです。
そこで、もっと細かく考えてみたいのですけれども、ネタバレになりますので、後回しにします。2014年8月14日付「ネタバレと引用」にも書いたように面白い本をお薦めする書評ブログではないので、そういうところを遠慮しないつもりなのですけれども、松本清張や『小さいおうち』と違って読んだり映像化されたものを見たりした人は殆どいないでしょうから、今後ネタバレになってしまうことを先にお断りして置きたいのです。「抱茗荷の説」の本文は、9月26日付(01)に挙げた論創ミステリ叢書15『山本禾太郎探偵小説選Ⅱ』に収録されている他、同書「解題」に挙がっている鮎川哲也編『怪奇探偵小説集』、それから細川氏が参照した、探偵小説専門誌「幻影城」第一巻第八号(昭和50年8月1日発行・定価680円・絃映社)に再録されています。私はまだ『山本禾太郎探偵小説選Ⅱ』しか見ていないのですけれども。
ネットでは青空文庫に、ハルキ文庫版『怪奇探偵小説集』を底本として収録されています。また「後味の悪い話まとめサイト@2chオカルト板」の「抱茗荷の説(山本禾太郎)」に、2005年6月24日投稿の梗概が出ています。これも時期的に鮎川哲也編『怪奇探偵小説集』に拠っているらしく、昨日注意した君子の母が「姉娘」であることは曖昧になっていますが、かなり細かい梗概で、「左胸」に「アザ」があるのが「君子の母」だと正しく把握しています。投稿者の想像により補った箇所や説明不足のところもありますが、内容を知るには十分だと思います。(以下続稿)