しばらく、原作で山田が鷹丘中時代に唯一出場した野球の試合、因縁のライバル小林真司投手率いる東郷学園中戦について、確認している。――原作の確認は、もともとは鈴木則文監督の実写映画『ドカベン』の設定との比較のために始めた作業で、実写映画では山田たちは野球の練習をするばかりで試合の場面がないから、この場面は実は問題にならない。小林投手も登場しない。だから飽くまでも参考程度に始めたのであったが、細かく見ていくと辻褄の合わない設定多々、原作者がこう描いてしまって今まで問題にもされず(した人もいたろうが特に訂正されないまま)に来た以上、今更突っ込んで見ても仕方がないのだが、私の性分として異同・齟齬をはっきりさせて置きたいのが1つ、もう1つは実写映画の設定に対する批判に対し、原作の設定が既にしてアレなんだから、この脚本はむしろ評価すべきだと云う気持ちを込めて、確認作業を続けているのである。飽きたら(もしくは材料が揃わなくなったら)止めます。
・東郷学園対鷹丘中の試合〜山田の負傷と決勝点(1)
11月21日付(54)にて、山田が腹部を負傷した回を「4回表」とした。その回の始まりを読む限りでは4回表としか思えないのだが、続きを読むと5回表らしいのである。この点について確認して置きたい。
東郷学園中の攻撃は、1回表(文庫版⑤292〜321頁)はいきなり3者連続死球の挙句、4番小林が満塁ホームランを打っていきなり4得点、5番はセカンドライナーを殿馬が落球するがそのまま1塁に送球して1死、続く背番号「2」は1塁線に(1塁手の猛司がミットを投げて)単打、続く「山本くん」の初球に盗塁を試みて山田の強肩に刺されて2死。そして「山本くん」は結局2球めをファウルフライでチェンジになるのだが、この辺り打順に疑問の存することは10月17日付(27)に、スコアボードに示される打順と守備位置と比較しつつ指摘した。
続く2回表(文庫版⑥19〜55頁)も再び無死から3者連続死球になるのだが、2人めは背番号「3」で、初回にファウルフライに倒れたはずの「山本」の背番号のはずである(背番号と守備位置が違っていない限り)。初回での「山本」の背番号ははっきり見えないが右端が見えていて「3」か「8」のはずである。それはともかく、3人めが打席に入ったときのラジオ実況(23頁4コマめ)が「さあノーアウト一 二塁 バッター早くも一番にかえって下田くんです/この下田くんも第1打席はデッドボールを受けています」と言っているから、初回はやはり人数通り7番で攻撃終了、2回は本当は背番号「3」の「山本」から始まっていたはずなのだが混乱しているのである。「下田」も死球で満塁になり、次がラジオ実況(29頁6コマめ)も「二番遠土くん打席に入ります/この遠土くんも初回にデッドボールを受けています」と言うのもスコアボードに合っている。この遠土は見逃し三振で1死になるのだが、続く3番の背番号は「4」になっている(34頁1コマめ)のである。しかしながらスコアボードに拠ると「4」は遠土の背番号のはずで、しかるにこの打者がピッチャー前にぼてぼてのゴロを打つ場面(42頁4コマめ)での背番号は「7」になっていて、こちらはスコアボードの3番「古河」の背番号で合っている。ちなみにこの3番の2球め、3塁線へのファウルの際に3塁ランナー、すなわち8番バッターの背番号「2」が見える(39頁3コマめ。ちなみに3塁ベースコーチは背番号「12」)。2死満塁で4番小林に回り、小林は再度フェンス越えの打球を飛ばすのだが、今度は外野を守る3つ子、赤一郎・青二郎・黄三郎(姓は不明。猛司の姓も不明)が「三位一体」の超ファインプレイで捕球してしまう。
続く3回表は昨日見たように三者三振(文庫版⑥75頁)で、最後に見逃し三振を喫した打者の背番号は「2」、打順は7番のはずで、これはスコアボードに合致している。
3回裏に殿馬の「秘打白鳥の湖」に拠る本塁打、動揺した小林が岩鬼の眉間に死球、眉間が割れて卒倒した岩鬼に対してベンチで応急の縫合が行われ、その時間を稼ぐために、9月28日付(16)に検討したように山田が24球粘るのである。
9人しかいない鷹丘中野球部は危うく岩鬼の負傷により棄権試合になるところが、応急処置の結果、岩鬼は次の回もマウンドに立つのである。
ここでスコアボードが描かれる(144頁1コマめ)。1回表の途中(文庫版⑤298頁1コマめ)で描かれたものよりも鮮明で出場選手は変わっていない。点数は3回まで記入されている。すなわち、これから4回表に入るはずなのである。
ところが、この回の先頭にアナウンスされるのは「4番ピッチャー小林さん」なのである(142頁2コマめ)。3回表は7番で終わったはずで、小林まで5人の打者がいるはずなのであるが、何故か4回表は小林からになっているのである。(以下続稿)