瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(41)

 昨日の続き。
小松和彦監修『日本怪異妖怪大事典』(1)
 この事典は項目を名称で細分化せずに大きく現象で捉えています。話型索引ではないので話の展開によってさらに項目分けするようなこともしていません。従ってこの話は、堤邦彦執筆の「ゆうれい【幽霊】」と云う5頁弱の項目(581頁上段18行め〜586頁上段2行め)の中で、多様な展開の1例として挙げられているのです。
 584頁上段8行めまでが解説文で、適宜事例に触れつつ説明しているが、この話には直接言及していません。そして解説文に次いで9〜13行め、下向きの白抜き矢印に続いて「アイヌトゥカ、いきりょう、かさね、/こそだてゆうれい、ごりょう、さかだ/ちゆうれい、さくらそうごろう、した/いのかいい、ひのたま、よつやかいだ/ん、れいこん」と、「みよ参照」(前付(23)頁「凡例/2 各項目の構成」の3項め)として、別に立項されている関連項目が列挙されています。
 584頁上段14行めから585頁下段20行めまで「事例」として15例の要約を示ています。この話は585頁上段17行め〜中段2行めまで、

⑨[長野県]/明治二五、六年の暮れ、道に迷った洋装の/紳士が白馬の蓮華温泉訪ねた宿の主人/は彼を泊め|ようとしたが、息子があまりに/怖がるので出ていってもらった。まもなく/紳士|は若い女を殺して逃げていたと分かっ/た。息子は紳士の背後に血みどろで髪が|乱【上段】れた若い女の姿を見たという。(『あしなか』二二四、一三-一六)


 灰色太字にした箇所は、7月25日付「小松和彦監修『日本怪異妖怪大事典』(1)」等に見たように、本事典の基礎となった「怪異・妖怪伝承データベース」に示されるこの話(番号 0030430|幽霊|ユウレイ)の「要約」にない、加筆部分です*1。「 地域(都道府県名) 地域(市・郡名) 地域(区町村名)」を記載する欄があるが、最初に「長野県」とあるだけで以下空欄です。原文には「蓮華温泉」とあるので、きちんと確認して「新潟県糸魚川市/」と、そして要約中にも「蓮華温泉」と入れて欲しいところです。それからデータベースを参照することで、事典には示されていない、執筆者や題名、掲載誌に関するより詳しい情報「 執筆者 末広 昌雄| 論文名 山の伝説| 書名・誌名 あしなか/ 巻・号/通巻・号 通巻224号/ 発行所 山村民俗の会/ 発行年月日 H4年2月/ 発行年(西暦) 1992年/ 開始頁 13/ 終了頁 17」も確認出来る。(以下続稿)

*1:他に異同は冒頭の「明治二五、六年の暮れ」。【8月28日付追記8月29日付(46)に言及した堤邦彦「「幽霊」の古層――江戸の庶民文化にはじまるもの」の引用、197頁32行め〜198頁2行め(データベースと同文)の改行位置「|」を追加した。