・小松和彦編『日本妖怪学大全』(1)
- 作者: 小松和彦
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2003/03
- メディア: 単行本
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「大全」と云う書名については、3月18日付「田中康弘『山怪』(5)」にて問題にしました。しかしながら本書は、23名の研究者による様々な切り口からの論文集で、確かに「大全」の風格があります。但しこの、妙に力の籠もったカバーだけ見たら、これが研究書だと気付かない人もいるかも知れません。
遊紙、扉に続いて001〜005頁(頁付なし)「目次」、1頁は扉「日本妖怪学大全●目次」上部中央に小さく明朝体縦組み。006頁(頁付なし)下部中央に「(凡例)」3項目、007頁(頁付なし)中扉、上部中央にやや大きく明朝体太字で標題。008頁(頁付なし)は白紙。
009〜028頁、小松和彦「妖怪と妖怪研究――序論に代えて――」は、末尾(028頁6行め)に小さく下寄せで「(付記)本稿は、『怪異の民俗学2 妖怪』の「解説」をもとに大幅に改稿したものである。」とあります。
029頁(頁付なし)は「Ⅰ 描かれた妖怪」の扉。031〜225頁まで論文7本。
227頁(頁付なし)は「Ⅱ 語られた怪異」の扉。229〜390頁まで論文6本。
391頁(頁付なし)は「Ⅲ 伝承世界の妖怪・怪異」の扉。393〜543頁まで論文5本。
545頁(頁付なし)は「Ⅳ 近現代の妖怪・怪異」の扉。547〜667頁まで論文5本。
669〜674頁「あとがき」は、末尾(674頁16〜17行め)に「平成十四年(二〇〇二)十二月一日/共同研究・代表 小松和彦」とあります。ここに本書の由来が説明されているので、一部抜いて見ましょう。
冒頭の段落(669頁2〜3行め)、
本書は、国際日本文化研究センターの共同研究「日本における怪異・怪談文化の成立と変遷に関する学際的研/究」の研究成果報告論文集として、共同研究員とゲストスピーカーの方々の論考を収めたものである。
そしてこの共同研究のメンバーについては、669頁11行め〜671頁9行めに当時の肩書きとともに30名が列挙されていますが、論考を寄せているのは、うち13名です。674頁12〜13行めにあるように、宮田登(1936.10.14〜2000.2.10)は「共同研究の終了/を見ることなく」死亡しています。
そうすると10名はメンバーでなかった者の寄稿と云うことになりますが、これについては、671頁10〜12行め、
本共同研究は、上記メンバーを中心に多くのゲストスピーカーを迎え、平成九年(一九九七)十月から三年間/の討議を経て、一年間のとりまとめを行ない、平成十四年(二〇〇二)三月に終了した。その詳細は以下の通り/である。
として、671頁13行め〜674頁8行め、全部で21回(実施日の表示なし)45名49題が列挙されています。小松和彦が3題、但しうち2題は、最初の「共同研究会の趣旨説明」最後の「さらなる怪異(怪談・妖怪)研究に向けて――共同研究のとりあえずの終/了にあたって――」と、共同研究の代表としての整理と挨拶のようです。他にメンバーの徳田和夫が2題、ゲストの今枝久美子が2題、発表していますが両名とも本書に寄稿していません。小松氏の発表も本書「Ⅲ」への寄稿とは内容が違います。
研究論文を書いていた頃の癖で、口頭発表をどこで活字化しているか、追跡したくなってしまうのですが、それでは本題から外れてしまいますのでこのくらいにしましょう。
前回、『日本怪異妖怪大事典』の「ゆうれい【幽霊】」項の解説文から、「木曾の旅人」に言及した箇所を抜きましたが、同じ趣旨の記述は、既に堤氏が本書に寄せた「Ⅱ 語られた怪異」の1つめ、229〜256頁「怨みを背負った旅人たち――廻国・懺悔の怪異空間――」に見えているのです。この論文は「ゆうれい【幽霊】」項の事例⑧の発心譚のような、「廻国」の僧が「怨みを背負った旅」を続けるきっかけとなった出来事を「懺悔」する、と云う話型の江戸時代に於ける展開について検討したものです。死人の手首が身体から離れずに残ったり、手形の痣が何時までも消えずに残ったり、蛇が首や腰に巻き付いて離れなかったり、明確に見えているので「一膳多い夕飯の怪」或いは「木曾の旅人」及び「蓮華温泉の怪話」とは(共通するところもありますが)区別して良いでしょう。従って、ここでは内容には及ばずに、節ごとの題を示すに止めて置きます。
229頁4行め「はじめに」
230頁2行め「一 生きていた手首」
233頁5行め「二 廻国・懺悔の怪異空間」
238頁16行め「三 蛇道心*1の因縁」
242頁1行め「四 近誉上人の法力と摂取院縁起」
247頁8行め「五 怨蛇と旅する男」
250頁1行め「六 仏教唱導と怪談咄のあいだ」
これが253頁13行めまでで、14行めに3行取り12字下げの「*」を挟んで最後、15行めから254頁(16行め)はここまでの本題を踏まえての展望になっています*2。254頁1行めまでを抜いて見ましょう。
さて、本稿では、冒頭に掲げた手首の怪、および蛇道心説話の二つのケースを当面の考究対象にすえて、人の/怨念を背負った漂泊者の懺悔咄にさまざまな角度から照射してみた。しかしながら、同型説話の流伝を追尾する【253】検証作業は、これで終わったわけではない。
そして、別に2つの話群について、手短に述べているのです。(以下続稿)