瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

森於菟『解剖臺に凭りて』(3)

・昭和書房版(昭和九年一月十五日印   刷/昭和九年一月二十日第一刷刊行/昭和九年二月二十日第二刷刊行・定價一圓五十錢・前付+284頁・四六判上製本
 初版上製本の書影は黒岩比佐子(1958.5.1〜2010.11.17)のブログ「古書の森日記 by Hisako古本中毒症患者の身辺雑記」の2009年05月28日「森於菟『解剖台に凭りて』(昭和9年)」に、表紙・背表紙・裏表紙を拡げた状態の写真が掲出され、2009年05月28日「森於菟『解剖台に凭りて』(昭和9年)・その2」に見返しの写真が掲出されている。ともにクリックすると拡大される。
 装幀者は、黒岩氏が述べている通り記載されていない。表紙の動物は、耳と前脚、それから髭から見て猫だと思われる。黒を背景に黒猫が描かれているので、闇夜の黒牛みたいな按配である。白抜きで最上部に「てり凭に臺剖解 著菟於 森」下左隅に著者名と同じ大きさで「房書和昭」とある。
 背表紙も黒地、表紙の文字と同じ書体の縦書きで「解剖臺に凭りて × 森 於菟 著」とあり「X」のところには鋏が描かれている。
 裏表紙は黒地に白の線描で、同じ図柄が4段、鼻眼鏡で聴診器を持った中年男性が『鳥獣戯画』から抜け出して来たような、笹を持った兎に背後から襲われて振り向いたところで、この医者の向こうには蓮の葉に大きな腹を店ながら仰向けに寝た蟇蛙が描かれる。蟇蛙は左後脚を蓮の葉から垂らしており、蓮の葉は茎に支えられた“解剖台”に見立てられているらしい。しかしメスや鋏などは描かれていない。
 見返しは表紙・裏表紙とも同じで、これも4段に同じ図柄が繰り返される。肋骨や胃腸などがやはり黒地に白の線描で描かれる。遊紙の裏には印刷されていない。
 次いでやや厚い紙の扉があって、これは白地の中央(17.0×9.5cm)が黒く白の線描、絵柄は中央に双眼の顕微鏡を覗き込む中年男性、手前右に観音竹の枝。背後には右に別の観葉樹、左に右後ろから眺めた胸の膨らんだ人体模型が描かれ、その奥には大きな窓と窓の間の柱が見える。上部、窓の辺りに横書きで「解剖臺に凭りて/森 於菟著」著者名はやや小さく横長。最下部中央に横書きで「昭和書房」これも横長。
 これらの原画はスクラッチボードに拠るものであろう。裏は白紙。
 次にアート紙の口絵の写真は右側上半分に「森鴎外博士より著者への獨逸語通信繁授」とのキャプションがあり、上半分に横書きでドイツ語4行、片仮名混り文の訳2行、下半分は縦書きの片仮名混り文の指示で、最後に「‥‥ 七月十日  乃翁/ ブクリ坊主殿」とある。裏は白紙。この口絵は丸井書店版(国立国会図書館デジタルコレクション)でも扉の次に存しているが、冨士出版版には存在しない。(以下続稿)

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 「古書の森日記」には私も1度だけコメントしたことがある。