昨日の続き。
・『特別恐怖対談』(2)
最終回である10篇め「遠藤周作――メイ手vs.メイ人篇」単行本193~211頁・文庫版219~240頁、1頁め(頁付なし)は扉で横組みで大きく上部に単行本は中央、文庫版は左寄せで題、単行本はその下にゲスト名、文庫版は右寄せである。下半分は吉行氏と遠藤氏のイラスト。2頁め(頁付なし)は白紙。本文は以下の6つの節に分かれている。節の題はゴシック体2行取り下寄せ(下に単行本は1字分、文庫版は2字分空白)で入っている。3頁め冒頭はさらに3行分空白。
「一天にわかに晴れ上がり」単行本195頁1行め・文庫版221頁1行め
「樹座と宇宙棋院」単行本198頁5行め・文庫版224頁13行め*1
「或る質問」単行本201頁10行め・文庫版228頁9行め
単行本203頁上・文庫版231頁上 腕を組んでハゼを見下ろす遠藤氏と吉行氏のイラスト
「細かい襞と疼く人」単行本204頁11行め・文庫版231頁9行め*2
「たとえばケチについて」単行本208頁1行め・文庫版235頁13行め
「年寄りをバカにするな!」単行本210頁12行め・文庫版238頁12行め
末尾(単行本212頁14行め・文庫版240頁18行め)に下寄せで小さく「(昭和六十年三月七日・銀座〈本店 浜作〉で)」とある*3。
1節めの冒頭部を抜いて置こう。単行本195~196頁4行め、文庫版221~222頁7行め。改行位置は単行本「/」文庫版「|」で示した。
吉行 (同席の男性に)今日は最初にキミからひところ発言してください。
同席の男性 実は、昭和四十九年から始まりました「恐怖対談」も今日がいよいよ最終回な|ので/す。
吉行 十二年になる。
同席の男性 遠藤さんで四十人目です。最初の二十回は三ヵ月に一度、その後ふた月に一度|のペ/ースになりました。十回終るごとに一年ほど休みましたけれど、それも含めると十二年|です。
遠藤 三ヵ月に一回とかふた月に一回というのは吉行の注文だったの。
吉行 のべつはなるべくやりたくなかった。怠舌宣言というのをその前に活字にしていたぐ|らい/だから。
遠藤 恐怖対談というのはもともとどういう意味だったんだ。ホストに恐怖を与えるという|意/味?
吉行 世の中のいろんな恐怖について話そうという狙*4いだったんだけれど、途中からはこだ|【221】わら/なくなってしまった。
遠藤 和田誠さんも十二年間ずっとですか。
和田 毎回対談の場にいたわけじゃなくて、サボったこともあるんですが、絵だけはずっと|描い/【195】てます。
遠藤 ゲストの人選はどういうふうに。
吉行 苦心惨憺*5だった。
遠藤 そうだろうな。対談というのは八〇パーセントくらい人選だからね。
「同席の男性」については、昨日引用した横山正治「解説」に説明があったが、ここでは横山氏その人であろう。和田氏の出席の度合いについては一昨日引用した新潮文庫2470『恐怖対談』の和田誠「解説」に記述があった。各篇扉のイラストの印象で云えば『特別恐怖対談』は対談の場を切り取ったような絵柄だが、『恐怖対談』は同席していないと描けないと云った風ではない。
昨日引いた横山氏の「解説」に関連するところでは、4節めの最後(単行本207頁15~20行め・文庫版235頁7~12行め)に、
吉行 女との対談はあまり好きではない。だから少ないですよ。恐怖対談では一人だけだし、/|「アサヒ芸能」で二百回やった時も女性は一割です。
遠藤 やっぱり気を使うからか、女性に対しては。
吉行 というより、女性はあまり対談に向いてないと思う。
遠藤 女性の専門家の発言だからな。黙ってうなずいておくことにしよう(笑)。そうか女|性は/向いとらんか。
と、女性との対談が少ないことについて語っている。「アサヒ芸能」の対談と云うのは前記、新潮文庫2470『恐怖対談』の「解説」に見えていた『吉行淳之介軽薄対談』のことである。ついでに7月17日付(2)には引用しなかった、和田誠「解説」冒頭部を抜いて置こう。267頁3~6行め、
現在のぼくの仕事の中で、似顔絵を描くということがかなりのシェアを占めているのだけれど、/そのきっかけを作ったのは吉行淳之介さんの対談であった。「アサヒ芸能」に連載されていた/「吉行淳之介軽薄対談」が単行本(講談社・昭和四十一年)にまとめられる際、ゲストの方々の似顔/をぼくが描くことになったのである。
吉行氏は「二百回」と言っていたけれども、『吉行淳之介軽薄対談』に纏められたのは、267頁15行め~268頁2行め「‥‥「軽薄対談」とその第二集、第三集に、出来不出/来はともかく六十三人の人たちを描いたおかげで、似顔のコツのようなものが僅かながら摑めた/ような気がする。‥‥*6」とあるから、対談の全部ではなかったらしい。
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