瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

青木純二『山の傳説』(03)

・丸山政也・一銀海生『長野の怖い話 亡霊たちは善光寺に現る』(2)
 昨日の続きで、文献に拠った「民話」に相当すると思われるものについて纏めて置こう。
 巻末「参考文献・出典・初出・引用」に載る文献のうち、参照出来たものは以下の通り(初刊順)。青木純二『山の傳説』は一草舎版が参照出来なかったので昭和5年(1930)初刊本(丁未出版社)、杉村顕『信州の口碑と傳説』昭和8年(1933)刊は覆刻版(郷土出版社)、杉村顕『信州百物語』昭和9年(1934)刊は叢書東北の声11『杉村顕道怪談全集 彩雨亭鬼談』(荒蝦夷)、昭和13年(1938)刊『新怪談集(実話篇)』を原著とする田中貢太郎『日本怪談実話〈全〉』(河出書房新社)、山村民俗の会 編『山の怪奇・百物語』平成元年(1989)刊は近年の再刊(河出書房新社)、『信州の民話伝説集成』は、今手許にある【東信編】のみ参照している。
三 ふたりのお菊 長野市及び北佐久郡 27~31頁
 『信州百物語』【41】お菊大明神の話(355~358頁11行め)※ 長野市松代町
 『信州の民話伝説集成【東信編】』お菊の墓 北佐久郡軽井沢町(232頁)
五 龍神のお告げ 木曽郡 35~36頁
 『日本怪談実話〈全〉』【168】龍神(258頁7行め~259頁1行め)
  ※ 災害の発生した日付が間違っているようである。
六 幽霊の絵馬 長野市 37~38頁
九 満願寺の小僧火 安曇野市 45~48頁
 『山の傳説』北アルプス篇【61】滿願寺の小僧火(穗高岳)175頁9行め~177頁5行め
 『信州の口碑と傳説』南安曇郡【4】滿願寺の小僧火(231頁8行め~233頁)
 『山の怪奇・百物語』胡桃沢友男「北アルプス山麓の怪異譚」の1話め「満願寺のお小僧火」155頁3行め~157頁3行め
十一 怨みの首塚 佐久市 55~56頁
十三 棄老伝説 千曲市及び南佐久郡 60~61頁
 『信州の口碑と傳説』更級郡【1】姨捨山(105頁4行め~110頁4行め)
 『信州の民話伝説集成【東信編】』生きた人間の立ち埋め 南佐久郡川上村(417頁)
十五 佐々良峠の絶叫 大町市 67~68頁
  ※ 67頁1行め・68頁6行め「佐々良峠」68頁10行め「多々良峠」。
 『山の傳説』北アルプス篇【38】里人の古説(佐々良峠)111頁4行め~112頁
 『信州百物語』【20】佐々良峠の亡靈の話(325~326頁4行め)
十七 秋山郷の消滅した村 下水内郡 71~72頁
十九 マモノ沢 茅野市 79~81頁
 『山の怪奇・百物語』小林増巳「八ヶ岳マモノ沢の犬隠し」の2話め「八ヶ岳の犬隠し」102頁15行め~103頁
二十 松代大本営と皆神山 長野市 82~86頁
二十三 八ケ岳の温泉 南佐久郡 101~102頁
 『山の傳説』南アルプス篇【30】本澤溫泉(八ヶ岳)305頁9行め~307頁4行め
二十四 八幡原の怨念 長野市 103~105頁
二十六 城の堀にいたもの 上田市 108~109頁
 『日本怪談実話〈全〉』【228】赤い牛(344頁)
二十八 野天の火葬場 伊那市 115~116頁
 『山の傳説』南アルプス篇【15】戸臺部落(仙丈岳)278頁2行め~279頁10行め
 『信州百物語』【28】人骨をかじる狐の話(338~339頁11行め)
三十 千人塚と経石 上伊那郡及び下伊那郡 121~122頁
三十一 山で撮影した写真 大町市及び木曽郡 123~125頁
 『日本怪談実話〈全〉』【190】写真に映った登山姿(278頁15行め~279頁14行め)
 『日本怪談実話〈全〉』【191】御嶽登山の記念写真(279頁15行め~280頁5行め)
三十三 墓地に佇む女 駒ヶ根市 132~133頁
 『山の傳説』中央アルプス篇【7】墓所に立つ女(寶劍山)233頁3行め~234頁4行め
三十四 貞享騒動と加助の祟り 松本市 134~139頁
 『信州の口碑と傳説』南安曇郡【7】義民中萱嘉助(239頁7行め~243頁3行め)
三十七 首を吊った女 長野市 145~146頁
四十一 夜泣き石 塩尻市及び飯田市 166~168頁
 全てを典拠に負っている話もあれば、導入に使っているだけのものもある。未見の文献も多いが今後、判明次第、追加して註にその旨明記するつもりである。
 『山の傳説』からも数話、採っている。そして、こうして並べて見れば、同じ話を杉村氏も使っていることは明らかだと思う。だとしたら、『山の傳説』から杉村氏が材を得ていることに、すなわち、「蓮華温泉の怪話」も「晩秋の山の宿」を採ったのだと云うことに、気付きそうに思うのだけれども、分かりにくい題と、直前のラフカディオ・ハーンの所謂《パクリ》としか思われない「雪女」に呆れて、見落としたのであろう。違うかも知れないが。(以下続稿)