・昭和56年頃に聞いた怪談ノート(4)前篇③ 怪談(その二)二階
昨日紹介した話に対するコメントと、もう1話。
まづコメントから。1行空けて4頁6~11行め。
怖い話をしながらも最後を生徒の想像にまかせる/というところがなんとも先生くさい。私は、「オッチャンが/つかまったんなら、この話はのこらないはずだ」と思ったが/「その男の人は走るのがとてもはやかった」とか、そんなふうに/も聞いたように思うが、なんせ五年前のことなので、あ/らすじしか記せなかった。同じ日に聞いた話、もう一つ。
校訂案。
怖い話をしながらも最後を生徒の想像に任せるというところが何とも先生臭い。私は、「オッチャンが捕まったんなら、この話は残らないはずだ」と思ったが「その男の人は走るのがとても速かった」とか、そんなふうにも聞いたように思うが、なんせ五年前のことなので、粗筋しか記せなかった。
同じ日に聞いた話、もう一つ。
既に理屈っぽかった――いや、伝承経路に関心を払っていたことが窺える。死骸を喰っていた男の足が速かった、と云うのは、私のような反応を見越して、そんな子供を怖がらせようと云う努力(?)なのだろう。
ここに「五年前」とある。9月12日付(04)に、このノートの執筆時期について、表紙によれば中学1年生、1頁には3年生らしく書かれているが、どうも中学2年生の時らしい、と述べて置いたのだが、私が小学校3年生だったのは昭和55年度、昭和55年(1980)に聞いたとして、中学2年生の夏は昭和60年(1985)、丁度5年後である。
1行空けて、4頁13行め~5頁4行め、
受験生が、夜中、勉強しよってんな(していた)、そしたら/雨戸をトントンとたたく者がいるんで、あけてみたら、(ぼ/うしかけて、めがねかけて)くらくて顔はよう分からんかっ/た(よく分からなかった)けどな、オッチャンがたってって、「だ/ばこやはどっちや」って聞くんで、「あ、それはあっちや」って/教えてやったんやって、そしたら、「ありがとう」いうて、オ/ッチャンが言った。それで受験生はまどから、あァ、オッチャン/【4】がたばこ買いに行きよォなァ(行ってるな)と見ていた/けど、雨戸しめて(勉強しだしてから)その受験者、イッて/思ってんな、なんでかって言うと、その子の部屋、二階やっ/たん。
どうも疲れて来たのか誤字が多い。「受験生」の「生」は2箇所とも、変な字を書いてその上から重ね書きして「生」にしてある。そして3つめは「受験者」になっている。――女子高講師の頃、何でこんな間違いをするのか、と漢字テストや定期考査の不可解な誤字・誤記を見る度に思わされてきたが、やはり間違うもののようだ。いや、古典籍の調査をしていたときも、少なからず誤字・誤写を目にしたではないか。
校訂案。
受験生が、夜中、勉強しよってんな(していた)、そしたら雨戸をトントンと叩く者がいるんで、開けてみたら、(帽子被って、眼鏡掛けて)暗くて顔はよう分からんかった(よく分からなかった)けどな、オッチャンが立ってて、「煙草屋はどっちや」って聞くんで、「あ、それはあっちや」って教えてやったんやって、そしたら、「有難う」いうて、オッチャンが言った。それで受験生は窓から、あァ、オッチャンが煙草買いに行きよォなァ(行ってるな)と見ていたけど、雨戸閉めて(勉強しだしてから)その受験生、イッて思ってんな、なんでかっていうと、その子の部屋、二階やったん。
明らかな誤りは訂正した。――よく、古典の校訂でこのように断ってあることがあるが、その「誤り」と思われる原文も公開するべきだと思う。実は校訂者の解釈が間違っていることもあるからである。(以下続稿)
【9月30日追記】原本の当記事に関連する写真を貼付した。