・稲田浩二『日本昔話通観●第28巻/昔話タイプ・インデックス』(2)
橘正典『雪女の悲しみ』の確認のために借りたのだけれども、次の作業にも絡むし、再々借り出す訳にも行かぬので、差当り関係しそうな箇所を抜いて置くこととしよう。
前回引いた「315 雪女」を読んで、これは独立した話と云うよりも<注>⑵に参照を指示されていた「産女」に「力」を「授け」られる話の Variation だろうと思った。タイプ・インデックスなんだから纏めてしまえば良かったのではないか、と思う。しかし<資料篇>に挙がる「巻―番号」のうち、番号の前に「○」が付いているのは231頁「凡 例」13~16行め「6 〈資料篇〉の項」に関する説明に、14~15行め「‥‥、○印の番号は、当該番/号の資料がそのタイプ・サブタイプの参考資料であることを示している。‥‥」とあるから、<注>⑴に挙がる京都「14―○102」と秋田「5―○213」の「人間に危害を加える」話は飽くまでも「参考資料」すなわち例外で、他の5巻に収録されている「雪女」譚が、この①②③のモチーフ構成の全て、或いはその一部、例えば②③を有するもの、と云うことになるのであろう。一定の広がりを持っているのであれば、確かにこれはこれとして1話型として立てるべきなのかも知れない。
ちなみに「一 むかし語り」の354~362頁「Ⅹ 霊魂の働き」に、「254 夢と蜂」から「274B 継子の訴え―継子と笛型」まで22のタイプが並ぶ中に、356頁下段9行め「260 産女の力授け*1」とあって、10~17行め、
①男が女に赤子を預けられ、抱いていると次第に重く/なるが抱きつづける。〔D 1687,E 425.1.4〕
②男は女の幽霊から、お礼に大力を授けられる。/〔E 341,F 610.4,N 817,Q 402〕*2
《参照タイプ》AT 470
<資料篇> 2―58○334 5―66 262 6―245○396 9―○198 24―177/ 25―○243 27―260
<注> 女は山の神・魚女房などともする。
とある。この話はもっと多いかと思ったのだが、特定の家の先祖にまつわる伝説すなわち書承で、口承の昔話としては左程ではないのだろうか。いや、同じような話は類話として同じ番号に纏められているから、実際はもっと多いはずである。
しかし、やはり赤子を抱かせるところからしても産女の方が本筋で、赤子を抱かせる雪女の方はここからの派生のように思われるのだけれども。
それはともかく、ハーンの「雪女」と同じタイプの話は「一 むかし語り」の323頁上段9行め~353頁「Ⅸ 婚姻」に載っている。まづ異類婚姻譚で「205A 蛇婿入り―針糸型」からしばらく異類の婿の話が「212A 犬婿入り―仇討ち型」まで、そして「213 観音女房」から「234 雪女房」まで「217B 絵姿女房―物売り型」を挟んでいるが大体異類の嫁、そして「235A 歌婿入り―ごもく型」から身分も財産もない男が智恵によって長者の婿になる話が並んで、最後だけが嫁入りの「253 難題嫁」である。
それでは「315 雪女」の<注>⑴に「雪女房」と並べて「善意のもの」として挙げてある「しがま女房」から見て置こう。(以下続稿)