瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

白馬岳の雪女(62)

・橘正典『雪女の悲しみ』(4)
 昨日の続きで「結 び――『雪女』――」で「民話」との関連について述べた箇所を、全て引くと長くなるので摘記して置く。
 9月30日付(59)に引いた牧野陽子の紹介にあるように、この章では冒頭、129頁2~3行め、

 雪女にまつわる昔話にはいくつかの型があるが、その代表的なものを『日本昔話通観』(同/朋社)のなかから拾いだしてみる。

として、㈠青森県南津軽郡、㈡福井県鯖江市、㈢青森県西津軽郡、㈣青森県弘前市の4話の要約を引用する。
 そして130頁10~11行め、

 これらの民話を内容によっていちおう分類すると、㈠と㈡は消失型であり、そのうち㈠を自/然現象型とすると、㈡は竹取物語型ということができよう。㈢は山姥型、㈣は報恩型である。/‥‥

とし、続いて『遠野物語』の雪女の話を引用して131頁1~2行め。

‥‥。」これは上記四つの型に収まらない雪女のもう一つの姿を伝えている。/いかにもありそうに思える鈴木牧之『北越雪譜』のなかには雪女の話は一篇もない。

とする。『遠野物語』の話が拾われていないのは昔話化していないからで、妖怪の伝承には複雑な筋のない、出たとか見たと云った程度の話が少なくないのである。
 ところで、9月30日付(59)に注意した版元名の誤記は橘氏に由来している。――当時の橘氏の勤務先・京都薬科大学の図書館には、現在『日本昔話通観』は所蔵されていない。過去に購入していたとも思えないので京都府立図書館、京都市図書館、或いは母校の京都大学附属図書館で閲覧したのであろう。
 以前だったら、私も出身大学の図書館に行って関係しそうな巻を机に積み上げてとっかえひっかえして確認してしまうのだが、入れないのでそう云う訳にいかない。私の住んでいる市の図書館には所蔵していないので再々見に行く訳にもいかない。いや、私の住んでいる市だと所蔵していてもたぶん書庫に仕舞い込まれて、気兼ねしながら少しずつ出してもらうことになるだろう。都内の図書館でも所蔵していない区が多く、都下は尚更である。勤務先の市の図書館にも所蔵がない。自転車で通っている近隣市の図書館2館では開架で閲覧出来るが、緊急事態が解除されても「短時間」利用が呼び掛けられているし、私もまだ長居しようと思っていないので、差し当たり次の巻ともう1巻、2冊借りて来た。
稲田浩二『日本昔話通観●第28巻昔話タイプ・インデックス』一九八八年九月一五日第一版発行・定価一六、〇〇〇円・同朋舎出版・ⅶ+742+98+6頁・菊判上製本
 巻末、左開きでまづ英文要旨が6頁、ついで3種類の索引が98頁ある。うち1つめ、1~20頁「タイプ名・サブタイプ名索引」を見るに、19頁右22~35行め〔〕に27~28行め、

雪女            厄 315
雪女房           婚 234

と見える。まづ「雪女」項を見て置こう。――187~637頁「日本昔話タイプ・インデックス」を見るに、233~431頁「一 むかし語り」363~401頁「Ⅺ 厄難克服」に、「275A 猿神退治―犬援助型」から「361 ふかと影」まで、狐狸妖怪なんぞに襲われる厄難を克服する(しない場合もある)話が並ぶ。378頁下段4行めに3行取り3字下げで「315 雪女」とあって、5~20行め、

 ①若侍が、雪の中で出会った女に、捜し物をしてくる/から、と預けられた冷たい赤子が、急に重くなり手から/離れなくなって、若者は気を失う。〔D 1687,D 2035,D2171.1,cf.E 425.1.4〕
 ②家老が化け物退治に出かけ、つかまえた小坊主が急/に大きくなるので、切りつけると崩れて粉雪となる。
〔D 420,H 1221,Q 82〕
 ③以来化け物は現われなくなる。
 《参照タイプ》AT 326
 <資料篇> 2―57 4―171 5―○213 7―225 8―283 14―○102/ 27―315
 <注> ⑴雪の変化*1には「しがま女房」「雪女房」に類した/ 善意のものと、人間に危害を加えるこのタイプの類とがある。/ 後者には、乳房を投げて人をあやめる雪女(京都)や、子供/ を連れ去る雪婆(秋田)などがある。⑵「産女の力授け」参/ 照。


 各地の類話はこの<資料編>に挙がっている巻と、番号を辿って行けば簡単に検出出来るのだが、しかし、長時間図書館で粘れない今、これはなかなか面倒である。(以下続稿)

*1:ルビ「へ ん げ」。