瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

赤いマント(374)

種村季弘 編『東京百話』ちくま文庫筑摩書房
 6月中旬に隣の市の中央図書館に出掛けたとき、東京都関係の本が並んでいる書架を眺めていて、2013年12月17日付(057)に取り上げた種村季弘「蘆原将軍考」が、種村氏が自分で編纂したアンソロジーに収録されているのを知って、借りて帰った。
・『天の巻』一九八六年十二月 一 日 第一刷発行・一九八六年十二月十八日 第二刷発行・定価680円・516頁

・『地の巻』一九八七年一月二十七日 第一刷発行・定価680円・458頁・『人の巻』一九八七年二月二十四日 第一刷発行・定価680円・459頁 私が上京したのは平成2年(1990)だけれども「東京砂漠」と云う歌謡曲等から、隙間なくビルが建て込んだ、殺風景な都会を何となくイメージしていたのが案に相違して、繁華街や大通りはともかく、住宅街に足を踏み入れると意外に緑が濃く、古く趣のある住宅や商家も少なくなく、私自身が目黒区の戦前建築のお屋敷(!)に暮らしていたから、このアンソロジーに漂う雰囲気は、何となく分かるのである。尤も、金のない私は繁華街を歩いても、歩くだけで買物はしないし、飲食もごく安い店でしかしなかったから、その残滓と表面ばかりを、そのつもりで味わっていたに過ぎないのだけれども。
 当時暮らした家のことは2019年12月5日付「芥川龍之介旧居跡(16)からしばらく回想した。当時書いた文章もあるけれども、俄に掘り出せないので、2019年11月10日付「芥川龍之介旧居跡(09)」に取り上げた、YouTube の Lyle Hiroshi Saxon が平成初年に撮影した東京の街歩き動画を、その当時の東京の雰囲気を知る材料として挙げて置こう。
 それはともかく、「蘆原将軍考」は『人の巻』の201~263頁「4 怪人奇人」の章に8篇収録されるうちの5番め、227~234頁に収録されている。副題はない。最後の行(263頁17行め)は小さく下詰めで「(「アナクロニズム青土社・昭和48年5月、河出文庫・昭和60年2月)」とある。当該箇所に異同はない。念のため改行位置を「|」で、2013年12月17日付(057)の引用に追加して置いた。(以下続稿)