高木敏雄『日本伝説集』が最近ちくま学芸文庫に収録された。
そこで、ぼちぼちと調べている。報告者の中にはその後、名前を見かける人もいるし、発表過程なども、あまり問題にされていないのではないか。詳細は追々報告するつもりなのだが、本になる前に順次「東京朝日新聞」に発表されている。
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私は以前からこの本に憧れていて、中学以前に図書館で読んだかどうか、記憶していないのだが、はっきりしているのは高校生のとき、宝文館出版の復刊があることを知って、駅前の老人が道楽でやっているような本屋に注文した。電話番号を伝えておいたはずなのに、その後一向に連絡が来ない。かれこれもう1年経とうかという頃(と云って、細部についてはっきりした記憶はもうないのだが)、訪ねてみると、届いているという。
赤い紙のカバーが付いていて、背表紙には「日本傳説集 〈高木敏雄著/編集山田野理夫〉」と細筆で書かれ、一番下に横書きで「宝文館/出 版」と明朝体で入る。表紙は同筆で中央に「日本傳説集」と大きく入り、右に「高木敏雄著 編集山田野理夫」、左下に明朝体で「宝文館出版」とある。このカバーの文字は全て銀である。裏表紙には何の文字もない。
帯があり、橙色の紙、背には「日本民間伝説の基礎/ 高木敏雄著」、表には横書きで「幻の名著・日本伝説資料集成/本書は柳田国男の同志である高木敏雄の手により明/治の末年大蒐集,大正2年に自費出版されたものの/永く世に隠れていた。50余年ぶりの復刻茲に成る。/伝説民話ブームといわれている昨今,もっとも原型/を残しているのは本書をおいて他にない。250余編/の伝説の宝庫である。」
帯の裏には「大正2年刊行時の/広告より」として、山田氏の解説「資料 高木敏雄他」に紹介されている「郷土研究」の広告文の一部が出ているが、異同がある。続いてゴシック体で「定価千四百円」、小さく「0039−00106−17715」と縦書きで入っている。
本体は上製本で紺色、背にのみ、カバーと同じ文字が黒で入っている。
本文については原本等と比較するときに言及するつもりだが、奥付の一部を紹介しておくと「日本伝説集 定価千四百円/昭和四十八年六月十日 第一刷/昭和五十年六月二十五日 第二刷(修正版)/著者 高木敏雄/編者 山田野理夫/……」とある。
その原本であるが、大正2年(1913)刊行で、その本文は近代デジタルライブラリーで閲覧することが出来る。宝文館出版の復刻は昭和48年(1973)刊で、60年目である。すなわち、山田氏の解説は特に注意していないようだが、帯に「50余年ぶり」とあるように、しばらくは再刊があった。いや「50余年ぶり」ではない。今はOPACで検索出来るから楽になったが、高木氏生前にも出ているし、没後に数版出たし、戦時中にも出ている。
今、手許に高木氏没後に出た武蔵野書院版(大正二年八月三十日發行・大正十三年四月廿五日再版・大正十三年九月一日三版)がある。本文は大正2年版と同じらしいが、細かいところが違う。「文學士高木敏雄著/日本傳説集/東京武藏野書院發行」の扉に次いで、高木氏の遺影が口絵として入っている。(以下続稿)