まず、昭和49年(1974)版から確認しておこう。四六判上製本、昭和四十九年二月十五日発行・定価九五〇円・宝文館出版・296+21頁。
表紙カバーは、水色の細かい縦縞のスクリーントーンの背景(下部に煙か水流のような白い筋が1筋うねっている)に赤の、Gペンで細密に描かれた河童の顔。表紙の大部分を占める大きさ。右上に「佐々木喜善著」その下に2行で「監修 山下久男/編集 山田野理夫」そして中央右寄りに「遠野のザシキワラシとオシラサマ」とある。以上の文字は全て墨筆。背表紙には水色(褪色?)で「遠野のザシキワラシとオシラサマ 佐々木喜善著」と表紙と同筆(一致はしない)、裏表紙には河童の後頭部と背景、それから中央部に獅子舞の恰好(?)をした子供が、やはり赤で小さく描かれる。
オオクボヨシヒコのブログ「あぁ素晴らしき哉、我が人生?」2011年1月12日「遠野のザシキワラシとオシラサマ 宝文館出版」に帯付の状態の書影と帯文、帯の裏表紙部分が紹介されている。当時の意気込みが伝わってくる。
カバーを外した状態の本も見たのだが、本体は『日本伝説集』『人身御供論』と同じような、毛皮のような模様のエンボスの、赤い表紙で、背表紙にのみ、カバー背表紙と全く同じ文字がやや縮小されて、銀で入っている。カバーと違うのは一番下に横書きで小さく「宝文館/出 版」と銀で入っていることである。
見返しは鶯色地に墨筆で遠野の略図、右下に「卜堂[印]」の落款、印記は読めず(白文方印)。図中に短冊型の枠を書いて場所を表示、範囲は北が上で、右上が[佐々木喜善の墓]右下[夫婦岩]左上[駒形神社]左下[とおの]。裏表紙見返しも同様で、今度は右は北の岩手県周辺の略図、右下に「卜堂かく[印]」の落款、印記は読めず(白文方印、見返しの印とは別)右(北)は[五戸]*1、右上(北西)は[大館]、上(北)は[岩手山][田沢湖][横手]、左上(南西)は[栗駒山]、左(南)は[平泉][松川][千厩]、下は海岸線で左(南東)は[高田]から右(北東)は[侍浜]まで。
扉は淡い黄色の紙に、カバー表紙と同じ文字が同筆(一致はしない)で大きく入り、左下に明朝体で「宝文館出版」とある。
1頁(頁付なし)には「目次」とあり、2〜3頁の見開きから頁付が入る。
この目次、ザシキワラシ/ワラワミコとダイダラボッチ/オシラサマの3つの部立になっているのは中公文庫版に至るまで同じだが、巻末に附される文章の箇所が異なっている。すなわち、昭和49年版では「監修者の解説 山下久男 二六八/遠野の市の謡 山田野理夫 二八四/佐々木喜善全著作目録 佐々木光広篇 巻末」*2であった。これが昭和63年(1988)版では「解説 山下久男 二六八/遠野の市の謡 山田野理夫 二八四」となっているのである*3。
昭和49年版では山田氏の文が296頁で終わった次に、「佐々木喜善全著作目録/佐々木光広篇」との扉(頁付なし、1頁)があって、その裏の2〜21頁までの20頁分が「発表年・月 〈発表紙/題名〉 部門 〈頁数/字数〉 筆名その他」という形式の一覧となっている。〈 / 〉は割書(2行)になっているところ。例えば「*439・1 〈「新東北新聞」/月影〉 同*5 四〇六〇七字 同*6」或いは「41・2 〈「芸苑」二号/長靴〉 同*7 〈五頁/四〇八〇字〉 〈同*8/(馬場勝弥編集)」などとある。そして末尾に「再刊、復刻分は省略/(昭和四十八年十一月現在)」とある。裏は余白でその次が奥付、発行日と定価があって「著者 佐々木喜善/監修 山下久男/編者 山田野理夫/発行者 羽生和男/印刷者 寺井藤左エ門/……」などとある。その裏が『日本伝説集』『人身御供論』の広告となっている。「佐々木喜善の師、柳田国男の同志/高木敏雄著 山田野理夫編 〈全国学校図書館協議会/日本図書館協会〉選定図書」と初めにあるのだが、この読点「ヽ」の使い方が何とも言えない。一瞬、並列かと思って*9奇異の念を抱かされるが、これは「柳田国男」の修飾句*10なのである。この少々強引な佐々木喜善→柳田國男→高木敏雄への持って行き方が、なんだか微笑ましい。
それはともかくとして、昭和63年版ではこの佐々木喜善の三男による全著作目録はない。その代わり、目次には出ていないが297頁に「昭和六十三年春」付の山田野理夫「後記」がある。ごく短いものなので、全文を引用してみる。
本書は「遠野物語」の語り部、鏡石佐々木喜善の著作のうち、ザシキワラシとオシラサマに関するエッセイを集めた。代表的なものはすべて網羅してある。新装版にさいし一部を訂正し正確を期した。
なお、宮崎英二氏に編集協力を求めた。謝意を表する。
裏は余白で、その次が奥付、「遠野のザシキワラシとオシラサマ ©/昭和六十三年四月十五日 新装版第一刷印刷/昭和六十三年四月二十日新装版第一刷発行/著者 佐々木喜善/編者 山田野理夫/発行者 羽生和男/……」発行所のデータやISBNなどはここでは省略する。「定価 1300円」。ここで注意されるのは『日本伝説集』『人身御供論』では新装版であることを全く断っていなかったが、一応(初版のデータは示さないものの)それを断っていることである。その裏は広告で「人身御供論/日本伝説集/福神(ふくじん)論/切支丹伝承/進化論の人文科学/ダーウィンのノート〈―知られ/ざる事実〉/遠野のザシキワラシとオシラサマ/遠野の昔話」が著者名と判型装幀、定価が附されて並ぶ。『日本伝説集』は訂正版の価格*11、『人身御供論』ともにまだ「A5判上製」である。最後の『遠野の昔話』には「佐々木喜善 〈四六判並製/近 刊〉」とあるが、これも新刊ではない。改めて、当ブログで取り上げることとなろう。
平成19年(2007年)版=中公文庫版の目次は、昭和63年のものに加えて「後記 山田野理夫 201/文庫版解説 桜庭一樹 202」とある。桜庭氏「文庫版解説」は205頁までで、207〜206頁蚤開きは横組みの「索引」があり、207頁の裏(頁付なし)の右下に小さく「本書は、昭和六十三年四月に宝文館出版から刊行された同名書籍を復刊したものです。復刊にあたり、新たに文庫版解説と索引を追加いたしました。また、引用を除いて新字・新仮名表記に統一し、明らかな誤字については修正をしております。なお、本文中の例話とそれをまとめた一覧に不統一がある場合、例話の表記を優先しました。」とある。ここらへんの配慮についてはまだ実例を点検していないが、時間が出来たら確認してみたいと思う。それから左下に「編集付記」として(右下の文章だって「編集付記」だろうと思うのだが)「差別的な用語や不適切な表現、語句」についての断り書きがある。次の頁が奥付で、横書きで「2007年7月25日初版発行/著者 佐々木喜善/発行者 ……/発行所 中央公論新社/……」とあって、山下氏の名前に続いて山田氏の名前も奥付から消えている。(以下続稿)