女優小林千登勢(1937.2.13〜2003.11.26)の、北朝鮮からの引揚体験記。
単行本と新書版(フォア文庫)とがある。フォア文庫には、並製本(普及版)と上製本(愛蔵版)がある。それから図書館派としては馴染みの埼玉福祉会の大活字本シリーズにも入っているが、これは一般に所蔵している人はあまりいないだろうから、単行本と新書版について記述した後に触れることとしたい。これとは別に「アニメ版」というのがあるが、いろいろと問題を含んでいるので、これも後日検討することとしたい。
物語は幼い頃の思い出(●1〜2)に始まり、戦時下の生活(●3〜7)、終戦後の先が見えない平壌での生活から小林氏の父親らが中心となって総勢79人の脱出計画が練られ(●8〜15)、昭和21年(1946)8月20日に平壌を出発して最初は貨物車で、途中からは徒歩で、38度線を9月3日に越えている(●16〜22)。そして日本への引き揚げ(●22〜23)、最後に、昭和56年(1981)3月2日の中国残留日本人孤児の訪日肉親捜しをニュースで見たことが、その執筆の動機として語られている(●23)。目次には章題しか載っていないが、本文の方には章題に添えて「●1」の如く章番号が入っている。
単行本と新書版では頁数に違いがあるので、以下言及する場合は章番号を示すことにする。
画家は小林与志(1925生)。単行本では、カバー表紙・背表紙のカラー装画、カバー裏表紙のカット(青地に白抜き)、扉のカット、もくじの扉・余白のカット、中扉のカット、章題の下にカット、各章に頁全面の挿絵(●23にはナシ)、章末の余白のカット(●1・2・6・8・9・10・18・20・23)の合計61点。新書版では、このうちカバー装画3点と扉ともくじ扉のカット、章末の余白のカット3点(●1・18・20)がレイアウト改変等により省かれ、合計53点が残っている。
Amazonにはフォア文庫の普及版の書影が出ている。
- 作者: 小林千登勢,小林与志
- 出版社/メーカー: 金の星社
- 発売日: 1984/05
- メディア: 新書
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単行本はA5判、児童書はたいていカバーを外した本体の表紙もカバーと同じであるが、本書もブックコートフィルムの隙間から見た限りでは同じに見える。カバー表紙は夜間林間を歩く避難民の群れ(13人)が青を基調にして描かれる。これは●18の挿絵と同じ場面を描いたものである。中央からやや下に赤紫色で標題、その下にゴシック体で「小林千登勢・作/小林与志・画」と横書きで入る。背表紙は桃色の帯が上(0.4cm)下(0.3cm)にあり、上部に標題、下部に喬木を描いたカラー装画、その下に縦書き2行、右に小さく「現代・創作児童文学」水色の線で区切って左に「小林千登勢」一番下に横書きで「金の星社」。裏表紙は青地に中央に背嚢に腰掛ける主人公のカットが白抜きで入り、右上に横書き・黒で「金の星社 現代・創作児童文学/第30回サンケイ児童出版文化賞受賞/厚生省中央児童福祉審議会特別推薦/定価950円」左下に「ISBN4-323-00570-9 C8393 \950E」と入る。この右上の受賞云々は早い刷にはなかっただろうが私の見た第17刷・第18刷には入っている。
カバー表紙折返しには本文の一部(●9、66頁6〜14)が引用されている。上部に横書きで「戦争よ,さようなら。」とあり(黒の下線あり)、左下に破線(1.6×1.3cm)に囲われた、直径0.9cmの兔や星をあしらった円形のマークがあり、円の下に「D−1」とある。
カバー裏表紙折返しには「戦争を知らない世代におくる名作」として、『かわいそうなぞう』『おこりじぞう』『いればをしたロバの話』『ガラスのうさぎ』『妹』の5作品が、〈読売新聞・評〉や〈朝日新聞・天声人語〉からの引用(4〜7行)を添えて紹介されている。(以下続稿)