瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

壺井栄『二十四の瞳』の文庫本(13)

 児童書の「文庫」は、文庫判ではないのだけれども、別に『二十四の瞳』を纏めるのも変なので「文庫本」に含めて置く。
フォア文庫C018(1)
・1980年2月 第1刷発行(308頁)

・1987年6月 第28刷発行・定価456円
 飾り枠は、書影では2011年4月22日付「小林千登勢『お星さまのレール』(3)」に、参考までに貼付した森絵都『宇宙のみなしご』の書影と同じになっているが、私の見た第28刷は森絵都『流れ星におねがい』の書影に同じである。 巻末に解説が2つ収録されている。286〜298頁「解説(1) =短編の作品と「二十四の瞳」」松尾不二夫*1武蔵野市立第二中学校教諭)、と299〜308頁「解説(2) =人間的な愛情から受けた感動が物語に」壺井繁治*2(詩 人)、である。
 後者の末尾近く、308頁7〜9行めの、次の記述が気になった。

 この小説が書かれてから二十年以上もたった今日、なお小学生から八十歳の老人に至/るまでの幅広い読者を持ち、この作者の作品としては最も大衆的に読みつづけられてい/るのは、‥‥*3


 「二十年以上もたった」とあるが、昭和27年(1952)発表だから昭和55年(1980)では「三十年近くたった」とすべきである。いや、作者の夫である壺井繁治(1897.10.18〜1975.9.4)は既に死亡しているから、フォア文庫のために解説を書くことは出来ない。すなわち、何か別の本のために、昭和48年(1973)頃に書いた解説を再録したものと察せられるのだけれども、フォア文庫には元になった本についての記述は見当たらない。――その見当は、もう付いているのだけれども、長くなるので次回に回す。
 カバー表紙の写真は、昭和62年(1987)7月11日公開の朝間義隆監督の映画。時期的に見て第28刷で改装されたのであろう。

二十四の瞳 [VHS]

二十四の瞳 [VHS]

木下惠介生誕100年 二十四の瞳 Blu-ray(1987年度版)

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映画パンフレット 「二十四の瞳」 出演 田中裕子/武田鉄矢

映画パンフレット 「二十四の瞳」 出演 田中裕子/武田鉄矢

 この映画は未見。――私にはどうも、田中裕子の良さが、よく分からない。主役を喰ったと云われる連続テレビ小説マー姉ちゃん」は、今と違って8時15分からの放映では小学生は絶対見られなかった。何度か、祝日などの機会に見たことがある*4けれども、私は小学2年生だから全くと云って良いくらい記憶していない。タイトルになじみがあるのと、母が場面の説明をしてくれた記憶とで、かろうじて見たらしい、と思えるのである。「おしん」は小学6年生のときで、やはり殆ど見ていない。だからその後、ともに作品そのものは駄作(特に後者)だった「わかば」と「まれ」に*5、似たような、冴えない役で出演していたのを見てしまったことが、評価とのギャップとなって私を困惑させているようなのである。映画もやはり殆ど見ていなくて、「天城越え」をテレビ放送で見たけれども、2013年7月30日付「松本清張「天城越え」(1)」に述べたように、少し前にやはり再放送されていた、和田勉演出のNHKのドラマに及ばない――と云うか、期待して比べて見てしまったためにがっかりしたのである。まぁそれは田中氏だけのせいではないのだけれども。(以下続稿)

*1:ルビ「まつおふじお」。

*2:ルビ「つぼいしげはる」。

*3:ルビ「はば・たいしゅうてき」。

*4:追記】夏休みには纏めて見ただろうと思うのだけれども、纏まった記憶はない。断片的な記憶も、後年資料映像として流されたものを見てのものかも知れないので、当時の記憶かどうか自信が持てない。

*5:今放映中の「とと姉ちゃん」はある意味「まれ」以上の駄作だけれども。