瑣事加減

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柳田國男『妖怪談義』(6)

 講談社学術文庫版が初出情報を落とした理由は、もちろん不注意としか言いようがないのだが、要するに『定本 柳田國男集』第四卷を底本にして、巻末の「第四卷 内容細目」を参照せずに編集したためであろう。「索引」がないのも、修道社版を参照していればその必要性を感じただろうと思うのだが、見ていなければ思い付かないのかも知れない。
 『妖怪談義』の文庫本は、もう1種類ある。ちくま文庫の『柳田國男全集6』(一九八九年十二月四日第一刷発行・定価1000円・筑摩書房・618頁)である。
 こちらは、同じ初出情報を各文末の( )内に、(「日本評論」昭和十一年三月)の如く、巻号は記載されず、紙誌名と年月のみを示している。
 「妖怪古意」の末尾は『定本』版と同じく「附 録」である(56〜58頁)。そして附録の末尾に(「国語研究」昭和九年四月)と初出が示されているのだが、この附録は5月28日付(4)に指摘したように、そもそもは単行本(修道社版)収録に際しての(附記)であったのだから、初出は附録の前に示すべきである。
 他は(附記)の前に初出が示されている(122・168・175頁)。但し「ザシキワラシ (一)」の初出が(大正九年二月)となっており、『定本』版の「内容細目」にも(大正八年十月)とあったのと異なるが、『定本 柳田國男集』第四卷の「あとがき」に「「ザシキワラシ (一)」は大正九年二月、玄文社藏版の爐邊叢書第三編として出版された佐々木喜善著「奥州のザシキワラシの話」の卷末に、「此序に言つて置きたい事」と題して附記したものである。」とある(507頁)ように、実はこちらが正しい。
 さて、このちくま文庫版『柳田國男全集6』には、「ぢんだら沼記事」の(附記)に指示されていた『一目小僧その他』も収録されているので、その参照には便利である。
 しかし、これはこれで使い勝手が悪い作りなのである。『6』の目次を見るに、こうなっている。

 目 次



妖怪談義 ……………………………………………  七
一目小僧その他 ……………………………………二一三
   *
おとら狐の話 ………………………………………五一七
片目の魚 ……………………………………………五九〇


 解 説 ………………………………飯島吉晴 六〇七
 解 題 ……………………………………………六一八


 これ以上詳しい目次はない。あれだけ雑多な文を寄せ集めている本の、内容細目がないのである。いや、一応あることはある。それは、『柳田國男全集32』(一九九一年二月二十六日第一刷発行・定価1000円・筑摩書房・566頁)の巻末に全32巻分纏めて「全巻総目次/全巻収録著作索引」として収められている。「全巻総目次」は501〜546頁に2段組、「全巻収録著作索引」は50音順・3段組で547〜566頁。『妖怪談義』の細目は509頁に示されている。
 それでも『6』の柱にでも細目が示されていると助かるのだが、奇数頁の左上、頁付の右に入っている柱は、9頁から211頁まで全て「妖怪談義」である。これでは使い物にならない。残念ながら「索引」もない。
 これは、『妖怪談義』に限らない。このちくま文庫版全集収録の、全ての作品について、こうである。
 確かに、文庫版の全集で、場所も取らないし、揃えて欲しいと版元が希望するのは理解出来るのだが、しかし常に『柳田國男全集32』を座右に備えて置かないとどこに何があるのか分からないというのは、少々不親切ではないか。
 そこで、各版対照の目次を拵えてみようなどと考えてみた。(以下続稿)