瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

柳田國男『妖怪談義』(7)

 「各版対照の目次」などということを思いついて、遅ればせながら刊行中の『柳田國男全集』の、第二十巻(一九九九年五月二十五日初版第一刷発行・筑摩書房・769頁)を借りてきた。

 口絵に、初版本のカバー表紙の白黒写真が掲載されている。249頁が中扉「妖怪談義」で、251〜394頁に「妖怪談義 目次」以下が収録される。但し「ザシキワラシ (一)  〔本全集第七巻所収『退読書歴』に収録のため省略〕」とのことで、完全版ではない。
 凡例(720〜722頁)に、本全集全体の方針と、個別の処理について述べてある。そのうち「3」に「初版本を底本とし、……。その後の改版によって増補があった場合、その部分を順次付け加えた。なお、「索引」等については別巻に再構成するので、収録しなかった。」とある(720頁)。
 そこで、触れるのを忘れていた修道社版の「索引」について触れて置こう。予定されている『柳田國男全集』別巻(未刊)の「索引」は、個別の索引ではなく全体に亙るものだろうから、柳田國男の全体を見通すには便利だが、修道社版の索引のような『妖怪談義』からの検出に便利なものにはならないはずである。
 さて、二三九〜二五二頁に単郭、段ごとに界線で仕切られた3段組、「總 記」「妖 怪」「書 誌」に大別されて、それぞれア行、カ行と行ごとに示している。「総記」は事項索引で、アクセント・石臼・神隠しなど。なお、五十音順だが修道社版の表記は歴史的仮名遣いなので、ア行に妖怪學・妖怪研究が見える(えうくわい)のは慣れないと面食らうかも知れない。二四二頁中段まで。下段から二四九頁中段2行めまで「妖怪」。残りが「書誌」で書名索引。漢字だらけでしかも本字だから、片仮名だらけであった「妖怪」からがらっと印象が変わる。
 少々嫌らしいことを言うが、柳田氏の著作権は来年切れる。これを機に、初出情報及び索引を完備した新版『妖怪談義』を誰か準備してくれないか。修道社版の「索引」は便利だけれども、人名索引・地名(新旧対照)索引も加えて欲しい。そして、やはり注釈が欲しいと思う。
 例えば、主宰誌「郷土研究」に載せた短文には、既刊号に載った他人の説・報告に言及・批判した箇所がいくつもあるが、それらの説がどういうものなのか、なんとなくは分かるが、恐らく雑誌掲載時のまま本書に再録していて、特に補足説明など加えていない。初出時は(特に同じ雑誌での論争の場合)他人の説について縷々説明する必要はなかったろうが、自分の意見のみを再録するに際してその説明をしないのは少々不親切である。しかも、巻号を示していないことも多い。
 他人の説について修道社(現代選書)版がその紹介をしなかったのは、まだ健在だった柳田氏がその配慮を認めなかった以上、差し出がましいことは出来なかった訳だから仕方がない。しかし「郷土研究」刊行当時を知る人が殆どいなくなった時期に刊行された講談社学術文庫版には、このような注記を加える必要があったのではないか。そして今や早い時期に発表された文章からは100年を経過し、そのような注記の必要性はいよいよ増していると思うのだ。
 以下、ざっと気付いた範囲で、注記の欲しいところを列挙してみる。(以下続稿)