瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

柳田國男『遠野物語』の文庫本(19)

 改版四十六版(角川文庫1295)のカバー表紙折返しには、縦書きで「柳田国男(やなぎだ くにお)」の略歴が載る。これは新版(角川文庫13359)にも同じ位置に横書きで「柳田国男/やなぎた くにお」として、以下ほぼ同文が載る。異同は「雑誌「民間伝承」を刊行し」が「雑誌「民間伝承」を刊行、」くらいである。
 改版四十六版のカバー表紙折返し右下には横書きで「カバー 森村 玲」とある。この森村氏の、民藝調の表紙はいいと思う。新版の表紙は「ぼくの夏休み」みたいで、半袖半ズボンの男児たち6人が青々とした田圃の中の道を走り、これはどうも「遠野物語拾遺」当時の情景ですら(もちろん『遠野物語』当時の情景では)ない。そう思って見ると電柱も2本立っている。佐々木喜善が土淵村村長に推され(そして失脚し)た理由を知る者としては、これには少々違和感を覚えざるを得ない。
 カバー裏表紙、左上に2つバーコードがあるのは同じだが数字が違う。その右に新版初版・八版では「ISBN4-04-308320-3/C0139 \476E/定価:本体476円(税別)」とあったが、改版四十六版では「ISBN4-04-308305-X/C0139 P350E 定価350円」とあって、定価のすぐ下に小さく「(本体340円)」とある。新版初版・八版の横書きの説明文については既に5月31日付(16)で簡単に触れた。改版四十六版では縦書きで、内容も改版の文面とはあまり重ならない。引用はしないが、例えば「今でこそ花巻から釜石にいたる鉄道の路線上にあるが」などの文言に、鉄道が主要移動・輸送手段だった時期の名残りを感じさせるものがある。裏表紙折返し、改版四十六版には横書きで「角川文庫柳田国男著作集」として、「海南小記/雪国の春/桃太郎の誕生/一目小僧その他/遠野物語/日本の伝説/昔話と文学/木綿以前の事/妹の力/日本の祭/日本の昔話/こども風土記/小さき者の声/野草雑記・野鳥雑記/火の昔/毎日の言葉/女性と民間伝承/地名の研究」が挙がっている。左下に小さく「カバー 旭印刷」右下に「K」のマークがある*1
 私が中学の当時、角川文庫と講談社学術文庫で、柳田氏の主要な著述は揃えられたのである。今や角川文庫は「新版 遠野物語」のみである。岩波文庫が『遠野物語・山の人生』を改版したり、最近『孤猿随筆』を刊行したりしているが。(以下続稿)

*1:2013年4月8日追記】改版四十六版で別のカバーが掛かっているものを見た。但し違うのは背表紙のみ。以前見たものも背表紙はメモし忘れていたらしいのでここに記述してみるに、縹色地で上部に「や|17-1 遠野物語 付・遠野物語拾遺」標題は明朝体の太字、中央やや下に著者名「柳田国男」、最下部にゴシック体「角川文庫●350」●に白抜き「P」。先月見たものは褪色してしまったのか白地で、上部(2.8cm)には何もない。或いは消えてしまったのか。標題は教科書体、その下にゴシック体「付・遠野物語拾遺」1字分空けて、緑色の四つ葉のクローバーがありその下に緑色で「102」すぐ下に著者名が教科書体、下部、小さく「や|17-1」とあって角の丸い緑色の長方形に白抜きで「角川文庫ソフィア」最下部小さく「350」。カバーの他の部分や本体には「ソフィア」のレーベルはない。すなわち、2011年6月2日付(17)の最後に「当時まだ角川ソフィア文庫というレーベル名はなかった」と書いたが、その後しばらくして「角川文庫ソフィア」というレーベルを作って、カバーも掛け替えたらしい。Wikipedia「角川ソフィア文庫」項によると平成7年(1995)。【2013年9月4日追記】カバー背表紙の地色が淡い緑色のものを見た。レイアウトは縹色地のものに同じ。今、縹色と淡緑色と、角川文庫ソフィアと、3種のカバーのかかった改版四十六版を並べているが、違っているのはカバー背表紙のみである。