スキャンミスに起因する誤植が多いようだ、と言いながら、昨日挙げたのはそうでないような例ばかりだった。その続き。
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・42頁13〜16行め、昭和13年(1938)1月号から雑誌「令女界」に連載が始まる久生十蘭「妖術」について、山下氏は7月号まで連載が続いたのは確かめたが、として、以下のように続ける。
……。未完に終ったという話もあり、その公算は/大きい。発表の舞台が少女雑誌なのに加え、“探偵長篇”と銘打ったこの小説のストーリーがテレパ/シーの応用による美少女の誘拐といった、あまりにも戦時中にそぐわない内容だったからである。連/載二回目の冒頭に付した梗概*1にもその杞憂が見て取れるようだ。「……
山下氏は時勢にそぐわないために未完に終わった可能性が大きい、というのだが、だとすれば「杞憂」の使い方が間違っている。完結したのなら杞憂だった訳だが。で、結局、どうなったのかは未確認。
・44頁11〜12行め、原文の引用の最後「外交官は慴然と旨を慄はせ/る。」とある「旨」は「胸」の入力ミス+校正漏れ。
・50頁1〜3行め、
……。もっとも、人狼は男のみとは限らない。わ/が国でも土佐国の千疋狼の話は、老婆が湯に入るところを覗くと、全身毛だらけで狼のようだったと/ある。高木敏雄の「人狼伝説の痕跡」(『人心御供論』所収)によれば、……
とあるが、この類の話については、こんなぼんやりした例を挙げるのではなくて、日本の昔話の、もっと新しい文献を参照するべきだろう。それから『人心御供論』は『人身御供論』の誤りで、これも入力ミス+校正漏れであろう。既に述べたように昭和48年(1973)に山田野理夫の編集により宝文館出版から刊行された「エッセイ」集である*2。(以下続稿)
*1:ルビ「あらすじ」。
*2:【2015年10月4日追記】内容については2011年2月14日付「高木敏雄『人身御供論』(1)」に纏めた。