瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

松本清張「天城越え」(1)

 私は松本氏が死んだとき大学生だったけれども、読者ではなかったので特に感慨はなかった。何も覚えていない。今、松本氏の没年を見て、大学生だったことを確認しているような按配である。では全く意識しないような存在だったのかというと、母が松本氏原作のドラマを必ずと云っても良いくらい見ていて、母は2時間ドラマを「自分は自由に旅行出来ないからせめてドラマで旅行した気分になりたい」という理由で見ていたが、松本氏原作のドラマは旅行しないものでも「見応えがある」と言って見ていた。……けれどもそうすると、見ない2時間ドラマは下町の人情がどうの、万引きとか浮気とか、そういった類のものだけになってくる訳で、まぁ、2時間ドラマは殆ど見ていたことになる。しかしそれも20年以上前のことだから、断片的に覚えていても筋とか作品名とかが関連付けられる程は、覚えていない。
 松本氏についてのイメージが出来ていないということでは、昨日、角川文庫7750『黒い空』の、刊行当初の紹介文に「黒シリーズの最新作」とあったのが没後削除されたことを指摘したのだけれども、――昭和30年代には『日本の黒い霧』『黒い画集』や、昭和35年(1960)から昭和36年(1961)に掛けて東京テレビで放映された松本清張シリーズ「黒い断層」、昭和37年(1962)から昭和38年(1963)に掛けてNHKで放映された松本清張シリーズ「黒の組曲」など、松本氏と言えば「黒」という連想で「黒シリーズの最新作」と強調しているのだけれども、私はまだそれがしっくりしないのである。そんな連想が自然と出来る程、読めていない。だから、内容ではなく本の外形のことばかりメモしているのだろうけれども。
 2時間ドラマに話を戻すと、大学に入ってから、特に院生時代は親とドラマを見るようなこともなくなって、深夜や昼間に家にいたりしたときに1人でなんとなく見ることがあって、あるときNHKで「天城越え」を再放送していて、名作だと思った。その後、映画「天城越え」のTV放送を見て、こっちは女の描き方が綺麗過ぎると思って引いた。
・TVドラマNHK

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・映画
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<あの頃映画> 天城越え [DVD]

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映画パンフレット 「天城越え」 出演 渡瀬恒彦/田中裕子

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・TVドラマ(TBS)
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 最後のTBS版は未見。
 結局のところ、私にとって松本清張原作のTVドラマと言えばいろいろ見ているはずなのに「天城越え」の記憶しかなく、それもあまり間を置かずに映画版を見たことで、その対比でTVドラマ版の印象が深まったように思う。映画版の方はここに書いたようなTVドラマ版と比較しての印象があるくらいで、殆ど覚えてない*1NHK版の再放送と映画のTV放送がいつなのか見当が付けられれば良いのだが、「NHKアーカイブス」の「これまでの放送」を点検するに、平成14年(2002)1月2〜4日3夜連続の「【NHKアーカイブス・スペシャル】昭和を駆け抜けた巨人・松本清張」の1日めに「■土曜ドラマ 松本清張シリーズ「天城越え」」が、平成23年(2011)1月30日に「■ドラマ「天城越え」〜演出家・和田勉さんを偲んで〜」が放映されている。私が見たのはそれよりも前である。或いは、2回めに平成14年の放送を見たから、こんなにいろいろと覚えている(この記事には細かく書いていないが)のかも知れない。

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 松本氏死去当時のことをもう少し思い出してみるに、当時の私は国文学を遡りつつ制覇しようという野望を抱いていて、結局足踏みして全く遡れなかったのだけれども、存命の作家の作品に取り組もうなどとは全く考えていなかったのである*2。それから、多くの読者のいる作家は、その読者たちに任せて置けば良いという、妙な理屈も。

*1:若村麻由美主演の「霧の旗」は覚えている。相武紗季主演の「霧の旗」は市川海老蔵が土下座するところで大笑いしてしまった。世評の高いTVドラマ版「点と線」は、見逃したが、記憶を手繰ってみると見ていない訳ではない。

*2:まぁ家族に2時間ドラマをよく見る人がいても、高校時代の私は運動部の所属で帰宅後はぶっ倒れるように寝ていたし、たまに引き込まれて最後まで見ることはあったけれども、大抵途中で見るのを止めて自室に引き揚げていたのであった。