瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

松本清張『内海の輪』(6)

松本清張小説セレクション(1)中央公論社上製本17.2×11.7cm)
第26巻『黒の様式I』1995年7月30日初版印刷・1995年8月10日初版発行・定価1796円・421頁
第27巻『黒の様式II』1995年8月30日初版印刷・1995年9月10日初版発行・定価1796円・455頁
 松本清張小説セレクションは阿刀田高編集で全36巻、平成6年(1994)11月から平成8年(1996)4月まで、毎月2巻刊行。各巻末に阿刀田氏の〈編集エッセイ〉が附される。この阿刀田氏の解説エッセイをまとめた本もある。
・『松本清張あらかると』一九九七年一二月七日初版発行・定価1900円・中央公論社・395頁

松本清張あらかると

松本清張あらかると

 文庫版も出ているが未見。
松本清張あらかると (光文社知恵の森文庫)

松本清張あらかると (光文社知恵の森文庫)

 単行本は「松本清張小説セレクション」と同じ寸法で、「松本清張小説セレクション」の表紙が押せば撓うくらいの強度だったのに対し、こちらは厚く固い表紙である。395頁の裏、奥付の前の頁に

本書は〈松本清張小説セレクション〉全36巻(小社刊)/の巻末に編集エッセイとして掲載された文章に加筆・/修正を加え、一冊にまとめたものです。

とあり、巻頭、扉の次の前付i〜iii頁「はじめに」の冒頭でも阿刀田氏自身が説明している。

 平成六年から八年にかけて、私は中央公論社の依頼を受けて〈松本清張小説セレクション〉全/三十六巻の編集を担当し、各巻の末尾にエッセイ風の解説をそえた。
 本書〈松本清張あらかると〉は、このエッセイ風の解説を集めて一書としたものである。
 内容的には、それぞれの巻に含まれている作品について、私なりの感想を述べたものであるが、/この解説をまとめて一書とすることは当初から企画されていたことなので、執筆に当たっては、
 ――エッセイ風な記述を多くしよう――
 と心がけた。
 つまり、各巻の解説ばかりではなく、私自身のエッセイを……巨視的な松本清張観やミステリ/ー論、あるいは私自身の小説作法、それと松本清張の方法との比較などなど、言わば各巻の作品/を離れて語る部分を多くすることに心を配り、筆をさいた。各巻の作品を読んでいない読者にも、/メッセージが送れるようにと、一通りの工夫をほどこした。


 さて、「黒の様式」は2巻にまとめられているのだが、阿刀田氏のエッセイの最後の頁の裏、奥付の前の頁に中央下寄せでそれぞれの初出が示されている。
 第26巻は、

初出誌
〈微笑の儀式〉『週刊朝日』一九六七年三月三日号〜四月二一日号
〈歯止め〉『週刊朝日』一九六七年一月六日号〜二月二四日号
〈二つの声〉『週刊朝日』一九六七年七月七日号〜一〇月二七日号


 第27巻は、

初出誌
〈犯罪広告〉『週刊朝日』一九六七年三月三日号〜四月二一日号
〈弱気の虫〉『週刊朝日』一九六七年一一月三日号〜一九六八年二月九日号
〈内海の輪〉『週刊朝日』一九六八年二月一六日号〜一〇月二五日号〈原題「霧笛の町」〉


 このようなデータは『松本清張あらかると』には示されていない。
 『全集』が初出誌「週刊朝日」での発表順に収録していたのを崩しているのは、まず2分冊にするに際して、頁数の不均衡を避けるためであったようだ。実際『全集』の細目を見ても、次第に頁数が増加して4作めの「二つの声」の前で切って前半3話・後半3話にすると、前半は後半の半分くらいの分量しかない*1。第27巻は2作めの「犯罪広告」があって5作め「弱気の虫」6作め「内海の輪」と発表順に並ぶが、第26巻は1作めの「歯止め」ではなく3作めの「微笑の儀式」を巻頭に据えている。これは、阿刀田氏の好みの問題であろうか。
 ところで、ここでは「犯罪広告」と「微笑の儀式」の発表された号が同じになっている。これはもちろん「微笑の儀式」の方が、間違っているので、「微笑の儀式」には「一九六七年四月二八日号〜六月三〇日号」とあるべきであった。
 それからカッパ・ノベルス版で『内海の輪』と抱き合わされ*2、『全集』で正式に(?)「黒の様式」に組み込まれた「死んだ馬」を、収録していない。これについてはこの「松本清張小説セレクション」の方針があるのだが、第24巻『影の車』について述べるときに触れることにする。(以下続稿)

*1:「二つの声」の後で切ると今度は前半4:3後半となってしまう。

*2:その後も角川文庫・光文社文庫で同様に抱き合されている。