昨日の続き。
『松本清張小説セレクション』の「黒の様式」の細目を、9月2日付(4)に『全集』について示したのに倣って、ここに示しておく。1頁(頁付なし)「目次」、3頁(頁付なし)は中扉で「黒の様式I(II)」は同じ。
第26巻『黒の様式I』 5〜116頁「微笑の儀式」、117〜203頁「歯止め」、204〜443頁「二つの声」 413〜421頁「〈編集エッセイ〉ノーベルの意味」
第27巻『黒の様式II』 5〜95頁「犯罪広告」、96〜263頁「弱気の虫」、264〜443頁「内海の輪」 445〜455頁「〈編集エッセイ〉変化に富んだ三篇」
1頁18行、1行43字。各作品の冒頭、1字下げ3行取りで標題、さらに3行空白があって、7字下げ2行取りの算用数字斜体で章番号。9月8日付(5)で見た地図だが、313頁の上半分にある。『全集』にあるものと殆ど同じ範囲、記入されている国鉄の路線も同じ、海が網点であるのも同じ。地名もほぼ同じ位置に入っているが、『全集』ではゴシック体だった都市名が明朝体になっている。図の寸法は『全集』7.0×9.9cm、『松本清張小説セレクション』6.4×8.8cm。
角川文庫の1頁(頁付なし)の扉、改版については8月26日付(2)で見た。初版二十三版は羽を銜え翼と脚を広げた鳳凰。3頁「目次」、頁数が異なるのみ。ルビ「ないかい・わ」も一致、但し初版は4行を中央に位置させていたのが、改版は右に寄せている。5頁(頁付なし)扉「内海の輪 「霧笛の町」改題*1」、6頁(頁付なし)の下部に地図があるが初版5.6×7.9cmに対し改版5.8×8.0cmで同じ図だが若干拡大されている。7頁から本文、7字下げ2行取りで算用数字の章番号、「1」の前にだけ1行分の空白。初版は1頁16行、1行43字。改版は1頁16行、1行38字。
なお、最初の方を比較していて、「1」の2段落め、角川文庫は初版7頁7行め、改版7頁8行めが
三か月めくらいにここにくるのだが、……
となっているのが、『松本清張小説セレクション』第27巻264頁8行めは、
三カ月ごとくらいにくるのだが、……
となっていることに気付いた。『全集』368頁上段11行めは、
三カ月めくらいにくるのだが、……
となっていて、光文社文庫9頁8行めは、
三カ月めくらいにここにくるのだが、……
となっている。1つとして同じでない。いや、角川文庫と光文社文庫は平仮名と片仮名の違いだけだが、「め」と「ごと」そして「ここに」の有無――これら異同の要因は何なのか、正直訳が分からない。『全集』が定本になるのかと思ったら、必ずしもそうなっていないようだ。松本氏の作品の本文研究は、これまでどれだけ蓄積があるのか知らないが、まだ編集に関わった者が達者なうちに、各出版社でどのような方針を立てて処理しているのか、きちんと記録に残して置いて欲しいような気がする。(以下続稿)
*1:ルビ「ないかい・わ」。