瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

赤いマント(73)

・中村希明『怪談の心理学』(1)
 昨日の続きをやろうかと思ったのですが、新年の図書館の開館を待って、もう少し文献の確認をしてからの方が良さそうな気がして来たので、2013年10月24日付(03)に取り上げ、2013年11月7日付(17)でも予告したところの、中村希明説の確認も並行して進めて行くことにします。
講談社現代新書1223『怪談の心理学――学校に生まれる怖い話一九九四年一〇月二〇日第一刷発行・定価631円・219頁
 カバーの右上に笑顔の白黒顔写真と以下の縦組みの紹介文があります。

なかむら・まれあき
一九三二年、福岡県生まれ。
慶應義塾大学大学院医学研究科卒業。専攻は/精神医学。現在、川崎市麻生保健所所長。/川崎市立井田病院精神科部長を兼任。
主な著書に『怪談の科学』『犯罪の心理学』/『酒飲みの心理学』――講談社ブルーバックス、/『アルコール症治療読本』(星和書店)など。*1


 アットホーム株式会社のHP「at home」に掲載される、松村文衞社長がインタビュアーを務める教授対談シリーズ「こだわりアカデミー」は平成2年(1990)から機関紙「at home TIME」に連載されているものの再録ですが、「怪談・心霊現象を解明する 中村希明氏」として1992年11月号に掲載されたものが再録されています。内容は中村氏の主著『怪談の科学』と重なっているようで、中村氏の主張の一端は、このインタビューによっても十分把握出来るのではないでしょうか。中村氏は昭和末年から平成初年の心霊番組に、心霊否定派のコメンテーターとして出演していたようです。私はそういう番組を見ていなかったので、知りませんでした。それはともかく「こだわりアカデミー」の早い時期のものには「近況報告」が附されていて「※中村希明先生はご永眠されました。生前のご厚意に感謝するとともに、慎んでご冥福をお祈り申し上げます(編集部)」とあるのです。しかしながら、没年がはっきりしません。ちなみに中村氏の著書は平成7年(1995)10月刊が最後です(その後に出ているものは再刊)。
 本書の内容も『怪談の科学』の延長上にあるのですが、これらに一貫した中村氏の問題意識については『怪談の科学』と本書を一纏めにして問題点を指摘するような機会があれば述べることとして、ここでは赤マントに関わるところに限って置くこととします。
 とはいえ、この赤マントが本書にとっては非常に大きな存在なのです。本書執筆の事情について述べた、217〜218頁「あとがき」から確認して置きましょう。217頁2〜11行め、

 十数年前に『怪談の科学』を書いてから、戦時中に小学生だった筆者をふるえ上がらせ/た「トイレの怪談」、赤マントの怪人はいつかとり上げてみたいテーマであった。
 現代新書のすすめで「学校の怪談」にとり組んでみたが、とりとめないと思っていた子/供のルーマーが、実はいろんなことを雄弁に物語ろうとしていたことに気付かされた。
 とくに、戦時下の小学生たちの間で大流行した「便所の怪談」のルーツが、実は学徒動/員でしだいに戦場に駆り出されていった旧制高校生たちのやるせないうっぷんばらしが生/んだ怪談だったことを知り、胸が熱くなった。
 終戦当時には旧制中学の二年生だった筆者は、授業にそれほどの被害は受けていない。/しかし上級生たちは英語の基礎を学ぶ大事な時期に工場動員に駆り出され大きなハンデを/おったと思い知らされた。


 中村氏も赤マントの体験者なのですが、いつ、どこで体験したのかが資料として使う場合に重要となって来ます。これについては、実は本書の記述には問題があるので、次に「はじめに」の記述を見た上で、そういった問題について確認することとしましょう。(以下続稿)

*1:ゴシック体。名前の読みのみ明朝体太字、二重鍵括弧(『 』)は半角。