瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

柳田國男・尾佐竹猛「銷夏奇談」(4)

 昨日の続き。
・「日本人と想像力」筑摩叢書版255頁上段17行め〜258頁上段4行め→学研M文庫版760頁8行め〜761頁14行め
 相当端折られている。筑摩叢書版では前の節「本所の馬鹿囃子」の最後の発言(255頁上段15〜16行め)となっているのが、学研M文庫版760頁7行めなのだけれども、学研M文庫版760頁8〜9行めの、その次の発言と合わせてここを抜いて見よう。

芥川 近頃の支那で出た本を見ると、何とか云う学校に幽霊が現れたことが出ています。
芥川 あの三州奇談か何かの中に、水の中から少女の出るのがありますね。手に網のよう/なもののついた、……


 ここも前回見た柳田氏の発言が並んでいるところと同様、芥川氏の発言が並んでいるのだが、やはり筑摩叢書版を見るに省略があるのである。芥川氏の『三州奇談』発言の方は筑摩叢書版256頁上段7〜8行めで、この間、筑摩叢書版255頁上段18行め〜下段3行めの尾佐竹氏の「伊豆七島の新島」の怪談と、255頁下段4行め〜256頁上段6行めの柳田氏の「座敷わらし」についての発言が存する。前者については小池壮彦の新島の怪談について取り上げる際に、後者は佐々木喜善のザシキワラシについて、書き掛けているものに含めて示すつもりである。
 以下しばらく、筑摩叢書版256頁下段5行め、学研M文庫版761頁3行めまでは同じだが、続く筑摩叢書版256頁下段6行め〜257頁上段7行めの『雷魔王物語』と『老媼茶話』に対する柳田氏のコメントが学研M文庫版では省略されていて、筑摩叢書版257頁上段8〜9行め、

 芥川 僕の友人でドッペルゲングの話を書こうとしてい/る男があります。


 これが学研M文庫版では1行(761頁4行め)で、1字下げせず補助動詞の表記がこれまでの引用でも察せられる通り「居る」となっている。
 そして761頁13行めまで、芥川氏が『藻汐草』に載る「ドッペンツゲング」の話を披露するのだが、筑摩叢書版ではこれに続く257頁下段2行め〜258頁上段2行めに掛けて、各人がこれをヒントに話を膨らませるのだが、いづれドッペルゲンガーの話ではない。そして、学研M文庫版761頁14行め、

芥川 「山の人生」に依れば、先生(柳田氏)も神隠しにお遭いになったそうですね。

と話が飛ぶが、筑摩叢書版ではこの発言(258頁上段3〜4行め)*1までが「日本人と想像力」の節なのだけれども、筑摩叢書版でもやはり、少々強引に話題を換えている印象である。(以下続稿)

*1:1字下げで「よれば」と開き、また括弧は一回り小さく「神隠し/」で改行。