どこに何を書いたのか自分でも混乱して来たので、以前のものに遡って見出しを附して置いた。
それから、対照に使用しているのは単行本は2013年12月21日付「赤いマント(61)」に示した第四刷、文庫版は5月24日付(01)に挙げた第1刷ではなくて、第6刷(2012年12月10日第1刷・2013年7月30日第6刷・定価543円・348頁)を見ている*1。
* * * * * * * * * *
・健史の元彼女(1)
主人公布宮タキの甥の次男・健史が、ヒロイン平井時子の息子・平井恭一を訪ねたのは最終章6、単行本307頁8行め・文庫版328頁4行め、イタクラ・ショージ記念館の「来館者が名前を住所を記帳するノート」に、単行本307頁13行め・文庫版328頁9行め「平井恭一という名前と、石川県の彼の住所を」発見したからである。
そこで平井氏宛に手紙を書き、奥さんの代筆による返書を得て、最終章7、単行本308頁11行め・文庫版329頁8行め、そのやりとりから「二ヶ月ほど経った夏」に、単行本308頁12行め・文庫版329頁9行め「北陸の小さな町の、海に近い場所に住」む平井氏を訪ねる。
健史がイタクラ・ショージ記念館を訪ねたのは、単行本307頁6行め・文庫版328頁2行め「五月のこと」で、平井恭一に会う2,3ヶ月前だから平成21年(2009)5月である。平成18年(2006)春に上京して、父の従兄を訪ねたり、最終章4、国会図書館で雑誌を閲覧したところで調査が、単行本292頁14行め・文庫版312頁10行め「完全に行き止まりにぶつかっ」てから、ちょうど3年経っていることになる。これに続く単行本292頁17〜18行め・文庫版312頁13〜14行め、
それに、僕自身はとくに、アートに関心があるわけでもなかったから、イタクラ・シ|ョージ記/念館のオープンも、まったく知らなかった。知らないまま三年経ってしまった。
という書き方も、「三年」前に調査が「行き止まりにぶつかった」ちょうどその頃に、イタクラ・ショージ記念館が開館していたのだ、という風に理解して良いであろう。
また、単行本293頁13〜18行め・文庫版313頁9〜14行め、毎日「絵本作家になるのが夢なの」と言っていた大学時代の彼女が、「在学中にせっせと描きためた作品を出版社に持ち込んで、ほんとうに絵本作家になってしま」い、「数ヶ月後の卒業を待」たずに大学を中退して上京してしまう。彼女は健史が「冗談抜きで驚いた」ことや「卒業を待てないのかと言い募」ったことで心が離れたのか、単行本294頁2〜3行め・文庫版313頁16〜17行め、健史は「卒業したら追いかけるつもり」で「就職先も東京に決」めたものの、結局「いろいろなことがうまくいかなくなっ」て別れてしまう。
単行本294頁4行め・文庫版313頁18行め、「そうして三年が経過し」とあるから、やはりこれも平成18年(2006)の、恐らく卒業前のことなのである。
イタクラ・ショージ記念館の開館が健史の訪ねる3年前であることは、最終章1、単行本頁行め・文庫版296頁12行めに「今年は記念館オープン三周年にあたり」と説明されている。
さて、健史がイタクラ・ショージ記念館を知ったのは、最終章4、勤務先の近所に開店した大型書店の雑誌棚で、絵本作家になっていた元彼女が寄稿しているのを発見した季刊絵本雑誌の「バージニア・リー・バートン特集」に、イタクラ・ショージ記念館のキュレーターの書いた「イタクラ・ショージの『小さいおうち』に魅せられて」という記事が含まれていたという偶然からである。
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