11月25日付(1)の続き。
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この映画を私が懐かしく思うのは、同じ空気を吸っていたからだ。
もちろん、相撲部に入る前の主人公のようにふざけた学生生活を送っておらず、当時の私は、夏目漱石『こゝろ』の、お嬢さんに惚れてしまう前のKみたいに、異性には全く惑わされずに生きて行けるのだろうと高を括っていたくらい、何にもなかったのだが、金にもブランドにも異性にも縁のなかった学生には、ただ何となく伸びやかだったような印象しか、ないのである。
前回「殆ど時代劇」と書いたのは「水戸黄門」とか「暴れん坊将軍」とか「遠山の金さん」とか、実際にはあり得ない妙な状況設定というつもりで、今からするとなんであんな風だったのか、それこそ「殆ど時代劇」というくらいあり得ない状況だったような気がして、ならないからである。
その空気が、この映画の中にも流れている。それが、良いものだかどうだか、分からない。生きる時代を選択出来ないのと同じで、あぁいう時代にいたことを少し恥じらいつつ、後ろめたく思いつつ、差当って肯定するしかないのである。……いや、私は時代の風潮には反撥を覚えていて、けれども従わずに好き勝手にしていたので、別に窮屈には感じなかった。
さて、この映画の撮られた時期だけれども、結構話題になった映画だから撮影日誌の類が公表されているであろうけれども、差当ってDVDを手掛かりに探って見ると、特典の「メイキング フォトギャラリー」に、いくつか撮影日の入っている写真があって、日程を推測させる手掛かりとなる。
田口浩正の「まわしの衣装合わせ‥‥」の写真(2枚)に「’91 7 2」とある。
それから「オーディションへ来た梅本律子‥‥」の写真に「’91 6 8」とある。また「梅本の髷テスト。」には「’91 7 10」とある。髷を結った姿の写真には「’91 7 14」とあって、この頃に相撲シーンの撮影か。
「撮影の合間に、寝転がって漫画を読みくつろぐ竹中‥‥」は「’91 7 23」で、読んでいるのは「ビッグコミック」。「衣装部の中山さんと梅本の記念撮影。」は「’91 7 25」。「道場のセットで準備中の清水美砂、田口、竹中。」と「北東学院との大乱闘のあとのカット。カメラは彼らの頭越しに穴山に寄ってゆく。」は「’91 7 29」。「北東学院との大乱闘あとの特訓シーンで、/「手形」をメイク」された竹中直人の写真も日付が読みづらいが「’91 7 29」のようだ。
私が中学時代に買ったバカチョンカメラにもこんな日付が入るようになっていて、何だかカッコ悪いので入れたいと思わなかったのだが、今となって見ると何時撮ったのかが分かるのが有難いのである。(以下続稿)