文庫版には初出が示されていないが、JETS COMICS版(第17刷)には奥付の上部に横組みで、漢字は1行めはゴシック体、2〜5行めは楷書体で、
●初出一覧
Vol. 1 花冷え/LaLa 1985年 5 月号
Vol. 2 花 紅/LaLa 1985年10月号
Vol. 3 花酔い/LaLa 1986年 2 月号
Vol. 4 花 嵐/LaLa 1986年 7 月号
とあり、1行分空けて明朝体で小さく「※作中のチェーホフ「桜の園」は湯浅芳子訳・岩波文庫より引用」とあって、この出典注記のみ文庫版にも引き継がれている。
連載期間は1年余に及んでいるが、作中の時期は2月から4月である。登場人物たちは高校2年生から3年生に進級するところで、作中の時代は連載開始直前の昭和60年(1985)と見て置けば良いであろう。そうすると昭和60年度に高校3年生になる学年で、昭和42年度の生れである。私が小学校低学年のときに高学年だった代*1で、全く同じだとは思わない*2が、そんなに大きく変わってはいないであろう。但し、私は幼稚園から小学校・中学校・高等学校・大学と共学だったので、当時の女子高がどんな雰囲気だったのか、知っている訳ではない*3。
女子高で教えたことがあると云っても、やはり生徒でないと生徒の生活や感覚は分らない。その上担任も部活の顧問もやらなかったから、授業で接するのみである。やはり授業中に見せている顔というのは余所行きの顔なのである。放課後に低い声でべらべら喋る声が聞こえて、見たら授業中に指して蚊の鳴くような声で答えていた見た目もおとなしそうな生徒だったので吃驚したことがある。――いや、生徒であっても『櫻の園』でも不良っぽい杉山紀子*4のグループ(成沢・さや・よし子)、中野敦子*5・倉田知世子*6・井上志摩子のグループ、そして演劇部部長で「しっかりした子」と思われて「ケムたがられ」ている志水由布子*7、と分かれていて*8、太字にしたのが演劇部員なのだけれども*9、志水さんは杉山さんと、倉田さんと、それぞれ別箇に心を通わせ合うのだけれども、杉山さんと中野さん・倉田さんが打ち解ける場面はない。自分のことを思い返してみても当り前のことで、同じ部活・同じクラスでも挨拶以上の言葉を交わさずに終った人の方が多いのである。――私は妙なところで変に目立ってしまうことが多くて、卒業アルバムにも人より多く載っている。3年生全員の集合写真では直立不動なのに期せずしておどけたポーズを取った連中よりも目立ってしまっているし、クラスの授業風景を撮影されたときには偶々なのだけれども席が2列め中央だった上に眼帯をしていた。入部していない部活の写真にも成り行きで、しかし堂々と写っている*10。定期考査でも最高点と最低点が100点差という極端なことをやってのけたり、まぁいろいろと悪目立ちしていたと思うので、有名だったと思うのだけれども*11、もとより親しみやすい性質ではないから、良く云えば(特に女子には)敬して遠ざけられて共学校にいながら殆ど男子高にいるみたいだったのである。それでも目立たない生徒よりは人と言葉を交わす機会は多かったろう(高2のときを除いて)。高2で留年し掛けたときに殆ど交流のなかった同級生が声を掛けてくれて、男女のグループで勉強を見てくれたのだ*12が、女子が普通に出入りして気軽にお喋りしているというのが普段の私の生活とは全く違った雰囲気があって、少なからず驚くとともに少々羨ましくもあったが、もちろんそれきりで以後何の交流もなかった。2014年8月17日付「三島衛里子『高校球児ザワさん』(3)」に触れた、高校時代所属していた運動部は、2年連続で新入部員の勧誘に失敗し、高2の夏合宿以後は半ば崩壊状態で、最終的に高3の初夏に全員追放された。詳しくは別に書くけれども*13、人数の多くない部活だったのにいがみ合って、ある意味で心が鍛えられた。(以下続稿)
*1:私が高校に入学したのは昭和62年(1987)4月。
*2:例えば、それまで共通一次試験だったのが平成2年(1990)1月、私の代から大学入試センター試験になった。
*3:いや、全く分からなかった、というべきだ。――転勤族の倅として、小5の年度末、中学卒業、そして高校卒業で転居したため、ただでさえ交流のなかったクラスの女子がその後どうなったか、小学校までの同級生のことは全く分からなかったし、中学の同級生は学区上位の公立に入った女子は知っていても、私立の女子高(公立の女子高は存在しない地域)に進んだ人がいたかどうかまでは聞かなかった。……ずっと同じ場所にいれば、断片的にでも見聞きする機会があったろうが、私は高校時代、自分の通っている高校にしか知った人間がいなかったのだから、仕方がない。
*4:読みは「のりこ」。
*5:読みは「あつこ」。
*6:読みは「ちよこ」。
*7:読みは「ゆうこ」。
*8:49頁(文庫版53頁)6コマめ〜50頁(文庫版54頁)2コマめに一般論としての「女たちのグループ」の「3パターン」が、丸ゴシック体で説明されている。
*9:殆どが「○子」であることも注意される。今や「○子」の方が稀少である。そのうち絶滅するだろう。
*10:実は中学の卒業アルバムでも同様に、入部していない部活の集合写真に紛れ込んでいたことを思い出した。
*11:そういえば博士課程の院生だった頃にも、先輩に「××君、貴方、有名なんですよ」と言われたことがある。
*12:その成果もあって追試はたぶん100点だった。形だけの(事前に問題を予告するなどの)追試ではなかったから、あのときだけは必死に勉強した。
*13:【2017年4月3日追記】勧誘失敗については2017年3月31日付「山岳部の思ひ出(3)」以下に、追放については2017年4月3日付「山岳部の思ひ出(6)」に詳細を述べた。