瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

怪談同好会編『古今怪異百物語』(1)

 以下は2014年4月2日に準備した下書きで、続きが書けそうになったので若干の注記と追補をして投稿することにした。本当はもっと手を入れたくなったのだが際限がないのでまずは昨年の下書きをほぼそのまま示して置く。

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 本書は以前から東雅夫が『百物語の怪談史』*1に取り上げていたが、都内の図書館に所蔵されていないので、閲読の機会がなかった。近年、東雅夫編の次の書籍に抄録されて、何分の一かを窺うことが出来るようになった。
・幽クラシックス『昭和の怪談実話ヴィンテージ・コレクション』二〇一二年一月二〇日初版第一刷発行・定価2500円・メディアファクトリー・217頁・四六判上製本

 欲を云えば全貌を知りたいのだが、9〜16頁(頁付なし)にカラー図版で函(10〜11頁)や見返し(12〜13頁)、本文挿絵(14・15頁)と折込口絵(16頁)を収録している、なかなか豪華な本である。*2 
 14・15頁の「『古今怪異百物語』挿絵」2図は、カラーにする必要はないのだが、用紙の古び具合が分かるから雰囲気は出る。さて、東氏の「編者解説」では211頁12〜16行め*3

 三ツ目入道の口から吐き出される妖気に乗って、燭台や提灯、櫛や枕、包丁や急須の器怪たちがわらわら/と群がり出る函絵と、骸骨たちの葬礼を描いた見返しは、漫画家・江戸風俗研究家として知られた宮尾しげ/をの筆になるものとおぼしい。表紙には死人花の異称をもつ曼珠沙華が描かれ、寝床で折り重なる美男美女/を二体の亡霊が見下ろしている光景を描いた折込彩色口絵(画家名の表記なし)が付されている。また本文/中にも挿絵多数を含む贅沢な造本の一巻である。

とあるだけで、本文挿絵の絵師に触れるところがないが、カラー図版に採られている挿絵、14頁「「女学生狐を生む」より」は原本の頁付は「九一」、図中に「昭和己巳七月末/朋世繪*4」とあり、15頁「「怪猫愛猫」より」は原本の頁付は「三三七」、図中に「ともよ繪□」□は「ともよ」を組み合わせた花押の如きもの。
 これをヒントに検索するに、この「朋世」は大正期から活躍した挿絵画家である神保朋世(1902.4.25〜1994.3.10)に相違ない。口絵は、単色で線を主にした本文挿絵とは雰囲気が異なるが、ネットの画像検索で閲覧出来る神保氏の彩色作品より推して、やはり神保氏の手になるものと見られる。*5

*1:この本には2011年3月23日付「新小説「怪談百物語」(01)」に触れたことがある。なお、下書きでは「『百物語の百怪』『百物語の怪談史』」としていた。『百物語の百怪』を大幅な増補改稿の上、改題文庫化したのが『百物語の怪談史』なので、準備段階では2つ挙げて置いたのだが、確認したところ記述がなかったので投稿に当たって削除した。

*2:下書きでは次が1行空白になっていたが詰めた。ここに挿入すべき内容は明日付の冒頭に記述するつもりである。

*3:下書きでは「14〜16行め」となっていて、引用も「‥‥、寝床で」から始めていたが、投稿に当たって段落全文を引用することにした。

*4:下書きでは「己巳」を仮に「×年」としていたのを改めた。「己巳」すなわち昭和4年(1929)である。

*5:これについて傍証を得たので稿を続けることにしたのである。【9月9日追記】最後の一文、「口絵は」の次に読点を追加した。【2018年1月7日追記】神保朋世の名を明示する、だから「傍証」ではないのだけれども、その資料は10月8日付(3)に示して置いた。