瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

連続テレビ小説「あさが来た」(1)

 あまり現在進行中のことを話題として取り上げないようにしていた。判断の材料が出揃う前に慌てて賢しらを云っても、結局は大層恥ずかしい思いをすることになるだけなのだ。なかなか洞察力やら先見性やらを誇るという結果にはならない。そこで、取り上げても本題としてではなく、飽くまでも付け足しという扱いで書き添えていたのだが、いろいろ問題が多いので(付け足しを再々繰り返すのもおかしいし)敢えて取り上げることにした。
 モデル廣岡淺子(1849〜1919)とドラマの主人公白岡あさの違いや、加野屋のモデル加島屋の事業についてはドラマの原案や便乗して刊行された本に記述されているであろうから、私は取り上げないことにする。
 まず原案の作者の本、それから関連本は使用されている写真で分類して、挙げて置く。最後にドラマ関連の出版物とドラマのDVDを挙げる。

小説 土佐堀川―女性実業家・広岡浅子の生涯

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文庫版 小説 土佐堀川 広岡浅子の生涯 (潮文庫)

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“あさ

“あさ"が100倍楽しくなる 「九転十起」広岡浅子の生涯

九転び十起き!  広岡浅子の生涯 (NIKKO MOOK)

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広岡浅子という生き方

広岡浅子という生き方

広岡浅子 逆境に負けない言葉

広岡浅子 逆境に負けない言葉

広岡浅子 語録

広岡浅子 語録

広岡浅子 気高き生涯 (PHP文庫)

広岡浅子 気高き生涯 (PHP文庫)

超訳 広岡浅子自伝

超訳 広岡浅子自伝

NHK連続テレビ小説 あさが来た 上

NHK連続テレビ小説 あさが来た 上

連続テレビ小説 あさが来た Part1 (NHKドラマ・ガイド)

連続テレビ小説 あさが来た Part1 (NHKドラマ・ガイド)

 この他に若干の関連商品や主題曲やサウンドトラック、電子書籍等があるが省略した。
 このドラマでは、地域の呼び方がおかしい。11月24日付11月26日付12月5日付及び12月6日付に指摘したように、当時は「大阪」や「和歌山」は町を指して云ったので地域名としては使わなかった。主人公の姉の一家が大阪を夜逃げして滞在していた辺りは恐らく「河内」で、「大阪府」は成立していたにしても「河内」の農村を指して「ここかて大阪や」などとは思わなかったはずである。姉一家がさらに移住して行った先は「有田」なのだから「和歌山」ではない。その「和歌山」の土地は主人公姉妹の実家今井家の土地を譲ってもらったのだが、何故そんなところに土地を持っていたのかがよく分からない(この話を持ちかけた主人公姉妹の母も「和歌山」と言っていたから「和歌山」の町に商業用地を持っていたのだとばかり思っていたら、蜜柑作りをするという展開になったので仰天した)のだが、「紀州」と呼んだはずなのだ。
 ところが、第11週「九転び十起き」の12月9日(水曜日)放映の第63回を見るに、また地域名で気になる台詞があった。――大阪の両替商加野屋の大番頭の雁助と、京都の今井家から主人公あさに付いてきた女中うめが、誰もいない薄暗い台所で、しみじみと交わす会話の一部、

うめ:「娘さん、いてましたんか?」
雁助:「はぁぁ、もう何年も会うて*1まへんけどなぁ。いやこないだに*2わてに嫁はん愛想尽かして、実家のある伊予の方へ帰ってしもたさかい」

云々というのであるが、ここに来て「伊予」である。何故「愛媛」と言わせないのか。四国は「讃岐うどん」や「阿波踊り」や「伊予柑」や「土佐犬」など、今でも旧国名が地域名として意識されているから、それで何となく昔風に言わせようと思ったのだろうか。それなら脚本家は近畿地方も昔は旧国名で呼んだだろうと何となく思うべきであった。――間違った「大阪」に脚本では変に重い意味を持たせていたので時代考証や大阪ことば指導の人も手出しが出来なかったのかも知れないが、ならばこの「伊予」こそ「このドラマではもう旧国名を使っていませんから」と嫌味の一つも言って「愛媛」とさせるべきだったろう。いや、ここは当時は「伊予」と言ったはずだからそのまま意見を出さなかったのだろうけれども。ところで上方落語を聞いていると四国は「遠いところ」という扱いで、四国出身者は殆ど登場しない。雁助の嫁が何故「伊予」から大阪に来ていたのかが気になる。
 こうして考えて見るに、地名の扱いは随分、好い加減である。何となく使っているのだ。
 何となく使っている、ということでは、――産婆と産科医、金銀貨と紙幣、丁髷と断髪、土曜日と日曜日、などの明治初期の時代相、文明開化に翻弄される様子をちょこちょこ取り入れているのも、何となく「らしい」小道具として「うまいこと」使っているので、何だか嫌である。(以下続稿)

*1:発音は「オーテ」。

*2:この辺り聞き取りづらかった。