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1つは、舞台が奈良であると云う点。
幼稚園児から小学校低学年に掛けて仏像が好きだった私は、祖母が大阪府に住んでいたので祖母宅を拠点に、奈良時代や平安時代の古仏を蔵する奈良県や京都市の寺院をある程度回ったことがある。当時の私は日々、仏像の絵を描き、粘土細工で仏像を拵えて、といった按配で、まともに成育したとは言い難い(笑)。この仏像愛好熱はその後冷めてしまい、何故か火山に熱中してしまうのだが、寺社巡りの癖はその後、用もないのにやたらと歩き回るという習性として残っている。
奈良県にはその後、横浜の中学の修学旅行と、兵庫県立高校2年生の頃に開催された「なら・シルクロード博覧会」に、たぶん親から入場券(タダ券)と交通費などをもらって出掛けたのと、3年生の初秋に明日香村に高校の遠足で出掛け、天理図書館に資料調査に赴いたのが2度――大学院生の頃に奈良市内のかつては修学旅行生で賑わったらしいホテルに投宿したことが1度、それから女子高講師時代に天理市内の旅館に泊まったことが1度、と、数えるほどしか行っていない。
大和盆地の風土には好感を持っていて、行きたいとは思うのだけれども暇と金がないのである。
それはともかく、もう1点は女子高が舞台ということである。TVドラマ放映時に私は女子高講師だったので、女子高がどのように描写されるのか興味があったのである。授業で使える小ネタも、拾えるかも知れない。
……もう1つ、重要な理由があった。――家人が、玉木宏のファンだったのである。今もファンである。
細かい筋は忘れてしまったし、私が説明しなくてもネット上にいくらでも説明があると思うので省略するが、とにかく玉木宏演ずる主役の臨時高校常勤講師が、鏡に映すと頭部が鹿になっている、と云う状態にされてしまう。そして、この状態を脱するためには清らかな少女にキスしてもらわないといけない、と云うのである。
現実にそんなことは有り得ないが、小説では作者がこうなってると書いたら、そういうことになるのである。
さて、最終回、奈良を離れることになった玉木宏は、最後に多部未華子演ずる、担任していたクラスの生徒で顧問をやらされていた部活の部員でもある女子高生に、駅のホームで電車に乗り込んでいる状態でキスしてもらうのだ。
――この結末をみて、ふと思い付いて、
「玉木宏だからキスしてもらえたけど、私だったら「先生はそのままの方が格好いいよ(笑)」とか言われてキスしてもらえないだろうなぁ」
と呟いたのである(当時はtwitterなぞなかったから本当に呟いたのである)。
ところが、これを聞いた家人が激昂したのである。こんな自虐的ギャグで何で激しく詰られないといけないのか、私は訳が分からなくて、すっかり狼狽してしまった。
そこで段々落ち着かせて理由を尋ねてみると、――玉木宏のポジションに自分を置いて考えるなんて、烏滸がましいにも程がある、と云うのである*1。
こっちは、玉木宏と自分の、彼我の差を自虐的に呟いただけ、であった。全くの自虐ギャグである。決して玉木宏と肩を並べようなんて思っていない。そもそもそんな発想自体がない。
しかし、そうは取らない人がいるのである。恐ろしいことだと思った。(以下続稿)
*1:間違っても「そんなに卑下するなんて情けない」という憤激などではなかった。