瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

遠藤周作「幽霊見参記」(09)

・文藝別冊「遠藤周作」(1)
 遠藤周作(1923.3.27〜1996.9.29)が、三浦朱門(1926.1.12生)と泊まった熱海の旅館で幽霊に遭遇した、と云う体験談は、遠藤氏も三浦氏もいろいろなところで書き、遠藤氏については雑誌に載ったものが単行本のエッセイ集に収録され、さらに文庫版で再刊されるなど、同一の本文に複数の版があって諸本の関係もややこしい上に、対談本も含めて繰り返し語られたその内容に異同が大きいので、どうしても確認作業が必要になるのですけれども、少々その作業のハードルを高めに設定してしまって、なかなか続きが書けなくなってしまっていたのでした。
 一応、初めから結論は設定してあって、それが今日紹介する雑誌の記述になるのですけれども、熱海の体験に加えてフランスでの体験と称するものを2つ添えたエッセイ風の小説「三つの幽霊」についての考証とともに、遠藤氏のサービス精神、と云うか、作家の書いたものを真に受けちゃいかん、と云うようなことを最終的に論ずる(?)つもりだったのです。
 中断したままでいることはずっと気に懸かっていて、少しハードルを低くして諸本をざっと確認して結論を書いてしまおうかと何度か思ったのですが、ぐずぐずしている間に、当時(2014年9月21日頃)誰も気付いていなかった(らしい)この体験談の「真相」を語った雑誌が、再刊されてしまったのです。
・KAWADE夢ムック 文藝別冊河出書房新社・A5判並製本
初版】『[総特集] 遠藤周作』2003年8月30日発行・239頁・定価1143円

増補新版】『遠藤周作〈増補新版〉』2003年8月30日初版発行・2016年3月30日増補新版初版発行・271頁・定価1300円 フランス留学時代の恋人に宛てた手紙を載せた「文藝別冊」が刊行される、と云うのは新聞記事を読んで知っていたのですが、先日図書館の新着図書の棚で実物を手にするに、内容は以前出たものにほぼ同じで30頁の増補と、若干の改変がなされているだけなのです。
 そうすると、別にまぁ発見者面出来るようなことでもないのですが、それでも私の気付いていた記述が人目に触れる機会が増える訳で、誰かが書いてしまってからでは、幾ら早くから材料を集めつつあっても同じように書けない、と云うか全く書けなくなる訳で、これまでのように、――10年以上前に出た雑誌(初版)なのに、例えばこの体験について2014年9月14日付(1)に示したように自らの編纂するアンソロジーに一通り収録した東雅夫(1958.4.11生)も気付いていないようだし、まさかこんな雑誌に例の一件について、いや霊の一件について、重要な記述があろうとは思われていないので、まぁ、これからもしばらく気付かれないだろう、などと、悠長に構えてもいられないような気分になり、取り敢えず結論を先に述べてしまえ、と思ったのです。――これまでも、まだ(ネット上では)誰も云っていなかったことを調べが不十分だと思って先延ばししているうちに、他人に書かれてしまった、と云ったことがちょくちょくありました。これは不十分ながらある程度書いていたことで、既に結論まで構想済みだったのですから、ちょっと順序が前後しても自分で書いてしまいたいのです。
 しかしながら、或いはもう、気付いている人がいるかも知れないと思い、今、念のため差当りtwitterで「遠藤周作」を検索してみたのです(発売日前後まで「すべてのツイート」で遡るのは大変でした……)が、この「文藝別冊」自体、余り話題になっていないようで、――慌てる必要はないのかも知れぬ、と思い直さぬでもないのですが、この切っ掛けを逃すとまたいつ続きを書くことになるか分からぬので、初版と増補新版が手許に揃っているうちに、懸案(?)を片付けて置くことにした次第です。
 まず2冊の「文芸別冊」の異同について、確認して置きましょう。(以下続稿)