8月16日付「淡谷のり子「私の幽霊ブルース」考証(1)」に指摘した、淡谷氏が昭和30年代前半に書いた自伝を見て置こう。
この自伝には、以下の4つの版があるようだ。
①『酒・うた・男 わが放浪の記』 春陽堂書店・244頁・B6判上製本
・昭和32年10月3日 第1刷発行・昭和32年10月7日 第2刷発行・¥240
② 潮文社新書『酒・うた・男 わが放浪の記』
未見。昭和37年(1962)刊。
③ 潮文社新書『わが放浪記』
未見。昭和44年(1969)刊。
④ 人間の記録16『淡谷のり子 「わが放浪記」』 日本図書センター・224頁・四六判上製本
- 作者: 淡谷のり子
- 出版社/メーカー: 日本図書センター
- 発売日: 1997/02/25
- メディア: 単行本
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書名は奥付に拠る。
私が見たのは①と④の2つであるが、この4つが同じものであろうと考えた根拠は、①と②は国立国会図書館デジタルコレクションに収録されており、「国立国会図書館内限定」公開のため本文はネットでは閲覧出来ないが、「目次」を見るに、①と②の頁は完全に一致している。②が新書判だとすると、①の縮刷かと思われるのである。それから④の4頁(頁付なし)「凡 例」4項目のうち2項めに、
2 本書の底本は、淡谷のり子著『わが放浪記』(一九六九年、潮文社)によった。
とあって③を底本にしているのだが、内容は(細部までの比較はしていないが)①と一致するのである。すなわち、標題や版元が変わっているものの、①から④まで内容には変更が加えられていないと判断されるのである。
なお、平成9年(1997)3月25日から4月25日まで開催された国立国会図書館第79回常設展示「流行歌に見る世相と大衆のこころ/―昭和のはじめから東京オリンピックまで―」には、
9.酒・うた・男 わが放浪の記 淡谷のり子著 <767.8-A973s-t> 東京 潮文社 昭37(1962)
として②が展示されている。①にしなかったのは、何か理由があるのであろうか。(以下続稿)