瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

閉じ込められた女子学生(1)

 昨日の続きで、これも準備時には「「ヒカルさん」の絵(10)」と題していましたが、前回述べた理由から題を改めました。元々この“閉じ込められた女子学生”の話は「ヒカルさん」の絵とは無関係で、何かのきっかけで関連付けられて「ヒカルさん」の絵に割り込んだ(?)のだと思うのです。しかしながら、内容としては連続していますから適当でないのを承知で「「ヒカルさん」の絵」の題のまま続けようかとも思ったのですが、やはり変えることにしました。――そうすると、9月27日付「「ヒカルさん」の絵(06)」を「閉じ込められた女子学生(1)」として、今日の記事を(5)にするのがより適当なのですけれども。

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 「ヒカルさん」の絵」については今年に入って、埼玉県民のブログ「怖い話ブログ」の2016年03月06日付「ヒカルさんの絵」に取り上げられました。埼玉県民氏は2013年05月14日付「突然ですが自己紹介です」に拠るとニコニコ生放送にて怪談を語ったりする活動をしていた人だそうで、流石に要領良くまとめてありますが、

この絵の噂は学内では古くからあり1990年代までは階段の踊り場に/ヒカルさんの絵は飾られていたらしいです。(その後不可解な事が続くので1990年代後半に/学内の倉庫におかれることとなったとのこと。)

と説明しているのは当て推量の誤りで、長くこの絵が飾られていた加藤会館は1990年代より前の平成元年(1989)に取り壊され、その後、新たに展示されることなく倉庫に保管されているのです。
 それはともかく、この記事の最後に、

今でもその場所の地下からは「出してー」という声と、カリカリと扉を引っ掻く音が聞こえるという/定番(?)とも言える怪談の大元がこの学校ではないか?と噂されています。

と“閉じ込められた女子学生”の話に触れているのですが、この種の話の流布に「奇跡体験!アンビリバボー」が力があったのは確かでしょう。前回取り上げた「アサギの呪い」もその影響下に発想されたものと思われます。しかしながら、これが大元かと云うと、――たぶん違うだろうと思うのです。

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 実は同類の話が、『霊感少女論』刊行の前年に出た、それなりに注目されていたシリーズに載っているのです。
松谷みよ子『現代民話考12 写真の怪・文明開化1996年5月25日第1刷発行・定価2718円・立風書房・352頁・四六判上製本
 11〜164頁「第一章 写真の怪」の128〜152頁「その十四、写真をめぐるさまざまの話」は、「その十三」までに分類しそこねた話を寄せ集めたような按配になっていて、さらに「話例・1」から「話例・12」まで分かれていますが、その129頁2〜11行め「話例・2」として次の1話が紹介されています。

話例・2 暗室にでるゆうれい
 日大芸術科の写真学科に幽霊が出るという噂がたった。おかっぱで色の白い子で、あ|なたにそっ/くりだというのでいやになる。授業の間とか、暗室ででるという。暗室では|ずっと前、すごい死に/方をした女の子がいた。暗室で作業していたら、誰もいないと思|ったらしく、外からしめられてし/まった。そのまま夏休みになり閉じこめられたまま死|んだ。ドアに出ようとしてひっかいたり、た/たいたりした傷あとがある。今もあるそう|だ。幽霊がその子なのかは判らないけど、あんまりいわ/れていやだった。
                                 東京都・松谷みよ子/文――
 
 分布
 ○東京都練馬区。本文。話者・幽霊ににているといわれた子。回答者・松谷みよ子(東京都在住)。


 文庫版(改行位置「|」)では23〜209頁「第一章 写真の怪」の161頁3行め28〜193頁「十四 写真をめぐるさまざまの話」、見出しは1字下げで162頁5行め「暗室にでるゆうれい」、1行空けて6〜11行めが本文です*1が、この話例のように1話のみの話型については「分布」を省いています。そして地名と話の出所は、本文から1行空けて162頁13行め〜163頁1行め、

 *東京都練馬区。本文。
   話者・幽霊ににているといわれた子。回答者・松谷みよ子(東京都在住)

と2行に示しています。(以下続稿)

*1:他の話では見出しと本文の間は詰まっている。