瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

『男はつらいよ フーテンの寅』(1)

 2011年3月8日から9日に掛けて準備したもので、2011年3月9日付「予告編について」に続いて、余り日を置かずに投稿するつもりであったが、11日の地震のためにそのままになってしまった。
 その後、「男はつらいよ」シリーズは第20作までは大体(多分1作か2作抜けている)見た。寅さんは好きではない。地方の町がまだ息をしていた頃の様子が写っているのを見るために、他に借りるもののない折などに借りて見た。それにしても、こんな身内がいたら大変である。その点、この第3作は、主人公に甘くないのが良い。立場相応に軽んじられている。例によって理不尽においちゃんに喰って掛かって、遂に黙っていられなくなった博と庭で対決し、張り倒され、さらに背負い投げを喰らわされる展開には快哉を叫びたくなった。旅館の女将が主人公に全く惚れていないのも、まぁ当然のことである。――そう云えば朝の連続テレビ小説に寅さんの出来損ないみたいなのが出て来たが、全く話にならない。渥美清は上手いと思った。それから、おいちゃんは森川信の「馬鹿だねぇ」がやはり合っていると思う。
 すぐに投稿しなかったのは、もう少し何とかするつもりがあったからなのだけれども、今となっては何を足そうと思ったのか思い出せないので、本文には手を入れず注記を加えて投稿することにした。

 草稿準備段階では上がっていなかった、松竹公式の予告篇動画を参考までに貼付して置こう。

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 さて、本題の『フーテンの寅』はシリーズ第3作で、監督は山田洋次ではなく森崎東。全作観るようなファンにとっては、お約束のパターンを踏まえていないとて不評らしいが、遥か昔に第23作、そして数年前に第1作を観ただけの私などには、十分面白かった。展開にリアリティのない箇所があるものの、主人公の造形はむしろパターン化された後年のシリーズよりもリアルなのではないか。
 とても全部見る気力はないが、レビューとブログが付いているものを貼り付けておく。*1

男はつらいよ フーテンの寅〈シリーズ第3作〉 [DVD]

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第3作 男はつらいよ フーテンの寅 HDリマスター版 [DVD]

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 予告編(2分50秒)は「続続男はつらいよ フーテンの寅 予告」という題である。
 「縁談? 俺の?」と驚く顔を正面から写して(00:27)、お見合い会場である川千家の場になるが、本編(10:57〜11:01)では左に寅次郎、右に博(前田吟)を写し、寅次郎の「縁談? だ、誰の?」との問に博が「兄さんのですよ」と答えて「俺の?」と来る。
 お見合い相手(春川ますみ)が泣きながら男への恨み言を言いつつヤケ酒をあおる場面(00:40〜00:54*2)に続いて、川千家の階段の上でタコ社長と付き添いのおいちゃん(森川信)がつかみ合いになって、タコ社長が階段から滑り落ちる場面がある(00:54〜00:58)。本編では、お見合い相手(春川ますみ)が亭主持ちであったことが判明して、仲人のタコ社長と付き添いのおいちゃん(森川信)が相次いで「ころっと忘れてたよ」と言いつつそそくさと逃げ出す場面の次(本編21:12)に挿入すべき場面である。
 タクシー代を借りに戻ってくる場面(00:58〜01:07)も本編(24:03〜24:13)とはセリフが違う。
 庭で喧嘩になる場面(01:12〜01:25)、「さぁ来ーい、この野郎」「博さん」「とめるなこのクソ爺い」「何言ってやがんだ馬鹿野郎誰がとめるかい。博さん、思いっきりぶん殴ってやってくれぃ」「馬鹿野郎、てめぇなんかに俺が殴れるかぁこの野郎」と博を突き飛ばして「ちょっと博さん」「あんた」云々と続くのだが、本編(31:00前後)では段取りが違う。
 こうして見ていくと、どうも没にしたテイクのフィルムを使って編集されているのではないか、という気がして来た。寅次郎が妹夫婦に見送られて柴又を去る場面も、霧がかかっていた本編よりも明るいし……複数比較して見られる視聴環境でなく、並べて比較するということも出来ないので、以下、肝心なところについて触れるのみにしたい。
 それは、予告編でもいよいよヒロインである旅館もみじ荘の女将「新珠三千代東宝)」が登場(01:45)して、女将の弟(河原崎建三)との橋の上での対決(この辺りずっと別テイク)、染奴(香山美子)とその弟との恋模様(ここは本編にない)などを織込みつつ、屋外での女将と寅次郎2人きりの場面(02:10〜02:25)、「どこ行くの」「へ、どこへって、足の向くまま気の向くまま、どうせ気楽な旅ガラスでございますよ」との会話があって、ここの最後から別の場面にかけて、

「怒らないでね。寅さんさえ良かったら、半月でも、一週間でもいいから、うちで働いて欲しいの」

というセリフがかぶる(02:20〜02:28)。この2人きりの場面も、このセリフも、本編にはない。
 このセリフはなかなか重要である。寅次郎がもみじ荘に居着いた理由は、本編(39:19〜39:24)では若い仲居によって、まず「お客さんで、女将さんの魅力に取り付かれてね、そのまま居着いて番頭になったって人もいるくらいなんですよ」と説明され、さらにベテラン仲居(野村昭子)によって詳細が語られる(43:35〜44:20)のだが、下痢をしてたびたび便所を借りに来た寅次郎に女将が同情して泊めてやったものの宿賃を持っていなかったので「風呂焚きでも薪割りでもなんでもするってそのまま捨て猫みたいに居着いちゃった」ことになっている。
 寅次郎本人はベテラン仲居の説明の直前に「男手が余りのねぇ寂しさにねぇ、お願いしますお願いしますと泣いて頼まれちゃあさぁ、まさかこの寅ちゃん、やたぁ言えねぇ性分じゃねぇかぁ」「いえお願いします、あと十日、いえ五日と泣いて頼まれているうちに半月よぉ」と、たまたま泊まり合わせたおいちゃん夫婦に語っていた(41:55〜42:42。それを野村昭子は小馬鹿にしたような表情で聞いていた)が、この予告編の女将のセリフは、この寅次郎の自己申告が満更嘘でもないことを保証するものとなっている。ところが、この場面はばっさりカットされている。台本などと付き合わせれば、この辺りの詳細も判明するのだろうが、もとより私は寅さんファンでもなんでもないので、ここに書いてファンによる解明をお願いするばかりである。
 次にロケ地が毛筆で「温の山温泉」と出る(2:36)のだが、湯の山温泉の間違いである。
 続いて橋の上での撮影風景があって、最後は浜辺でトランクの上に腰掛けようとして転倒する場面、最後に「次週当劇場/大公開」。

*1:草稿のママ。草稿を準備した段階で、Amazonレビューとブログ記事が附されていたものを選んだらしい。ここではそれ以前のもの2つと、新しく出たもの1つを追加して置く。

男はつらいよ フーテンの寅〈シリーズ第3作〉 [DVD]

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*2:ここも本編とは別テイクのように見えるが、比較して見ることが出来ないので検証放棄。