昨日の続き。
扉の用紙は横縞模様の淡い橙色。楷書体縦組みで上部に「女 木 川 界 隈」、下部に「田辺貞之助」とある。ごく薄い灰色で版本風の絵が刷られており右上から左下へ斜めに、標題の2字めの上をかすめる子持枠の上辺が入る。下は『江戸名所圖會』巻之七の二十九丁裏、三十丁表の見開き「小名木川/ 五本松*1」の模写で、他の辺は入っていない。文字は絵の上部、右に「小名木川/ 五本松」、標題の辺りに「深川の末/五本松といふ/所に舩を/さして」、左に大きく「川上と/この/‥しも*2」と、絵の傾きに合わせて斜めに書き入れる。右下隅に絵の傾きとは無関係に真っ直ぐ縦書きで「江戸名所図絵より」とある。
1〜4頁「まえがき」、1頁15行、1行44字。1頁はまづ3行取り4字下げで大きく「まえがき」とあり、さらに2行空けて本文。書名の由来を述べた最後の段落を抜いて置く。4頁2行めから、
なお、小名木川は古くは女木川とかかれたようである。現に芭蕉句碑にも女木川とあるので、こ/の本の表題に借用した。いまは黒い濁水の帯と化した小名木川も女木川と書いてみると、昔物語の/川のような、情緒あふれる野趣を思わせるからである。
昭和三十七年春
田 辺 貞 之 助
とあって最後の著者名はやや大きい。
5〜8頁(頁付なし)は「目 次」で、「女木川界隈」の章が19節(さらに3項が立てられる)、6頁13行め、2章め「旅でひろった話」は8節、7頁8行め、3章め「女性についての臆測」は5節、8頁1行め、4章め「愚かなひとりごと」は6節、8頁8行め、5章め「折にふれての思い」は4節。章題は大きく、節題は2字下げ、項目名は3字下げ、中央やや下に半角漢数字でそれぞれに頁を示す。
章の扉には上部やや左寄りに大きく章題を示し、下部右寄りに素描のカット、頁付なし。2章めのみ中央上部に章題、下部にカット。扉の裏は白紙(頁付なし)。
9頁(頁付なし)「女木川界隈*3」とあって、「界」の字の左からやや小さく、
との句が添えてある。この句は136頁13〜14行めに、
と引用されている、11〜12行め「丸八橋のたもと」にあった「浅間様のほこら」の「鳥居のし/たに」ある「小さな句碑」から採ったものである。
他の章の扉には句の引用などはない。(以下続稿)