瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

岡本綺堂の文庫本(5)

・『女魔術師』(3)
 「岩井紫妻の恋」を収録する『岡本綺堂読物選集③ 巷談編』について。題は扉に拠る。
 1〜4頁、川口松太郎「烏滸がましき序」に続く中扉(1頁)と目次(3頁)には頁付がない。中付とでも呼べば良いのだろうか。
 5頁(頁付なし)「三浦老人昔話」の扉で、6頁から本文で200頁まで。すなわち『三浦老人昔話』をまるまる1冊収録している。『三浦老人昔話』は別に取り上げるかも知れないし、今回の記事に絡まないので踏み込まないで置く。
 問題は後半である。
 201頁(頁付なし)「巷談新集」の扉で、202頁から本文で439頁まで。
 こちらは『巷談新集』と云う本があるのではなく『岡本綺堂読物選集』編集に当たって、このように纏めてみたまでのようだ。
 440〜447頁、岡本経一「あとがき」(「昭和四十四年八月」付)から該当箇所を抜いて置こう。446頁11〜16行め、

 この巻を巷談編としたのは、三浦老人の昔話につらなる感じのものを収めたからで、便/宜上の分け方に過ぎない。巷談を広い意味にとれば、この双書の怪談も探偵談もみな巷談/で、所詮は綺堂老人の語る古き時代の街の噂ばなしである。巷談新集は大正十年刊の「子/供役者の死」から採ったもの、随筆集から採ったものもあり、最後の四篇はいずれもサン/デー毎日の所載である。昭和十一年十月の「二人女房」で半七捕物帳の筆を折ってから、/十二年の年末に「虎」を書いて、そして読物の筆を絶った。


 「巷談新集」の14篇は、「三浦老人昔話」と違って末尾に下寄せで小さく、典拠が示されている。以下、収録作品を列挙しつつ、典拠を挙げて置こう。
・「不 孝 者」202〜234頁14行め「大正十年三月刊「子供役者の死」より 」
・「ゆ ず 湯」235〜257頁12行め「大正十三年四月刊「十番随筆」より 」
・「磯部のやどり」258〜273頁13行め「大正十年三月刊「子供役者の死」より 」
・「子供役者の死」274〜286頁14行め「大正十年三月刊「子供役者の死」より 」
・「岩井紫妻の恋」287〜300頁(8行め)
・「最後の舞台」301〜342頁10行め「大正十年三月刊「子供役者の死」より 」
・「深川の老漁夫」343〜351頁4行め「昭和二年二月作「文芸春秋」  」
・「怪談コント」352〜363頁(7行め)
・「怪談一夜草紙」364〜377頁15行め「昭和八年一月「日曜報知」  」
・「魚   妖」378〜389頁3行め「大正十三年作「週刊朝日」  」
・「夢 の お 七」390〜401頁11行め「昭和九年十月作「サンデー毎日」  」
・「鯉」402〜415頁5行め「昭和十一年四月作「サンデー毎日」  」
・「牛」416〜424頁8行め「昭和十一年十二月作「サンデー毎日」  」
・「虎」425〜439頁5行め「昭和十二年十二月作「サンデー毎日」  」
 「岩井紫妻の恋」と「怪談コント」に典拠が入っていない。
 光文社文庫『女魔術師』に共通するのは「磯部のやどり」「子供役者の死」「怪談一夜草紙」そして素性の明らかでない「岩井紫妻の恋」と云うことになる。(以下続稿)