瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

岡本綺堂の文庫本(06)

・『女魔術師』(4)
 今回は4月26日付(03)の補足をして置こう。
 「◎底本出典一覧」を見て「可能な限り早い本に拠ったと云う訳でもない」との感想を抱いたのだが、これはむしろ、著者生前の最も新しい版を積極的に採用した、と云うことなのだろうかと思い直している。それはともかく、雑誌「新演藝」と新聞附録「日曜報知」を除く単行本の底本は、国立国会図書館デジタルコレクションにて閲覧出来る。単行本『うす雪』で「海賊船」と抱き合わされていた表題作「うす雪」は、単行本『兩國の秋』にも再録されているのだが、続刊された『狐武者』5〜122頁に収録されている。
光文社文庫(光文社時代小説文庫)『狐武者 傑作奇譚集2016年8月20日初版1刷発行・定価680円・329頁

狐武者 (光文社時代小説文庫)

狐武者 (光文社時代小説文庫)

 そしてカバー裏表紙の紹介文に「ほとんどが初文庫化となる傑作七編」とあったことについてだが、「怪談一夜草紙」は次の文庫本に収録されていた。
河出文庫〈綺堂/随筆〉江戸のことば』二〇〇三年六月一〇日初版印刷・二〇〇三年六月二〇日初版発行・定価820円・河出書房新社・324頁
江戸のことば (河出文庫)

江戸のことば (河出文庫)

 それから「子供役者の死」が近年、次の文庫本に収録されている。
岩波文庫31-191-3『日本近代短篇小説選 大正篇2012年11月16日第1刷発行・2013年1月15日第2刷発行・定価800円・377頁
日本近代短篇小説選 大正篇 (岩波文庫)

日本近代短篇小説選 大正篇 (岩波文庫)

 紅野敏郎紅野謙介千葉俊二宗像和重・山田俊治編。
 16人の16篇を収録、岡本綺堂「子供役者の死」はそのうちの3番め(55〜71頁)である。55頁にはまず標題と作者*1そして下部に光文社文庫のカバー表紙折り返しにも使用されている顔写真を掲出し、1行41字で小さく、2〜9行めに岡本氏の略伝、10〜13行めは以下のように、本作の解題になっている。

「子供役者の死」は一九一五年(大正四)三月、実業之日本社から刊行された『孤蝶馬場勝/弥氏立候補後援現代文集』に書き下ろしとして収録された。大正一〇年三月に隆文館から単/行本『子供役者の死』が刊行されるに際し、冒頭部分が書き換えられたが、本書では綺堂が/得意とした伝聞調の聞き書き体形式が明示された初出本文を底本に用いた。


 冒頭部分が書き換えられた、と云っても4行あった前置きが2行になった程度で、他にも細かいところに異同がある。(以下続稿)

*1:ルビ「きどう」。