瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

睡眠不足(1)

 最近、元の職場から引き揚げてきた荷物を整理していて、その中に博士論文があったのである。審査用の草稿も含めると何冊もあるので、話の種に持って行って、別に研究機関のような職場ではないから、こんな調査をしてましてん、と云った話をして、そのまま、たまに自分で引っ張りだして眺めるくらいにしていたのである。
 提出時の状況については2015年6月16日付「学会誌の訃報欄(2)」にも述べた。――連日深夜に、睡眠時間3時間の生活を1ヶ月余り続けて提出に漕ぎ着けたのであるが、今回また改めて眼にして、余りの酷さに愕然としたのである。博士論文は審査後、製本するまでに間があって、その間に審査時に助言されたことどもを追加して完成させるのであるが、私は学界、と云うか、研究機関と云うものにもうすっかり嫌気が差していて、仕事が充実していたから虚脱はしなかったが、博士論文には殆ど手を付けなかった。学界から逃れるように仕事にのめり込んで行ったのである。そして殆ど手直ししないまま最終製本版の印刷に訪れて以来、大学院の敷居を跨いでいない。
 先日「睡眠負債」のNHKスペシャルを見て、今、私は夜なかなか眠れないのに明け方に目が覚めてしまうと云う按配で、確かに頭のキレが悪くなっていると思うのであるが、博士論文を提出した頃はキレッキレで打てば響くような按配だった。2つの職場で、一回り年上の女性の同僚から「My dictionary」呼ばわりされるくらいの頼りにされていた。今はそのような自信もない。今より睡眠時間は短かったと思うのだが、博士論文提出と云う環境で気が張って、テンションが上がっていたのかも知れぬ。いや、当時はまだ7月7日付「『吉野朔実劇場』(4)」に見たような、ネット検索して簡単に答えが見付かるような時代ではなかったから、信用出来る人に尋ねるのがかなり確実な方法だったのである。私は物を知っていると云うより(偏ってはいるが)調べ方を心得ているつもりだから、答えられなかったとしても、何を見ればそう云った辺りのことに見当が付けられるか、助言が出来たことも信用に繋がったかと思うのだが、しかし今や一人一人が「My dictionary」を掌中に収めているから、私もとんと、知識を披瀝し、アナログな調べ方を伝授する機会を失ってしまった。調べ方は技術だからともかく、知識の方はもう大分抜けてしまったように思う。
 だから、こんなブログに逃避しているのかも知れない。
 それはともかく、久し振りに博士論文を見るに、学会発表したり学会誌に発表したりした論文を組み込んだ箇所は良いのだが、提出直前に従来の調査メモから使えそうな部分を取り出して文章を整えた箇所は、酷いのである。やはり余裕がないと良い仕事は出来ぬのである。(以下続稿)