瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

大澤豊監督『せんせい』(3)

 5月9日付(2)の続きで、オープニングの「キャスト」について。
 提示される順に番号を附して示す。なお、役名は映画を見ただけでは分からないものが多い。
 物語は「長崎県五島/1972年(昭和47年)3月」小峰父子3人と山口竹子が「長崎港」に向かう連絡船に乗って五島を去る場面に始まる。その後、黒崎の小学校で再会し、夏に長崎大学医学部附属病院で主人公が死ぬまでが大半で、最後に「10年後/1982年(昭和57年)8月」のシーンがある。ラストにも出演する者に★、ラストにのみ出演する者に☆を附した。
中央「五十嵐めぐみ
 主演五十嵐めぐみ(1954.9.18生)主役の小学校教諭・山口竹子を演じる。
左「宮崎靖雅栄正議藤森政義」右中「志喜屋文
左中「斉藤とも子」右「湯沢紀保河野正明矢野和朗
 ②右、③左に示されるのは副主人公である少年の妹・小峰悦子(えっちゃん)で②子供時代を志喜屋文(あや。1971.12.27生)が、そして③10年後の青年時代を斉藤とも子☆(1961.3.14生)が演じている。斉藤氏は学園ドラマのヒロイン役を多く演じていたらしいが、私は志喜屋氏と同学年なので流石に見ていない。志喜屋氏は、この映画公開と同年の朝の連続テレビ小説おしん」に出演しており、この頃が子役としての全盛期であったようだ。②左、③右に副主人公の小峰信彦とその転校先(父の郷里)黒崎での友人2人、田島徹・久藤哲男が示されている。宮崎靖雅→湯沢紀保☆(1954.1.1生)・藤森政義→河野正明☆(10.3生)・栄正議→矢野和朗☆(12.20生)、となる。青年役は3人とも劇団俳優座所属で、湯沢氏は昭和50年(1975)入団で昭和60年(1985)退団、河野氏と矢野氏は昭和57年(1982)入団で現在も俳優座所属である。俳優座HPでは月日のみ示して生年が分からない。子役は藤森氏が「あばれはっちゃく」など幾つかのTVドラマに出演しているくらいで、宮崎氏と栄氏についてはネット上に情報がない。
 8月8日付「松本清張『砂の器』(6)」に触れた樋口尚文編著『「昭和」の子役』の「第二部:子役列伝――「昭和の子役」クロニクル」を見れば何か記述があるであろうか*1
左「中原早苗麻志奈純子西川ひかる」右中「松本留美亀井光代
 中原早苗(1935.7.31〜2012.5.15)は、田島酒店で長門勇が息子を叱責するところに居合わせて、竹子先生の病状について不吉なことを言う。
 麻志奈純子(麻志那恂子、1946.11.6〜2013.5.3)は竹子と仲の良い保健室の先生で、竹子の祖父は「飯島先生」と呼んでいる。
 松本留美(1949.2.4生)は、長崎大学医学部附属病院で竹子たちの部屋を担当する看護婦。
 西川ひかる★(1945.11.23生)は田島徹の母・田島すみ江。
 亀井光代(1943.12.8生)は藤田早苗の母・藤田友子。
左「立石凉子柿崎澄子 /長崎の子供たち」右中「小沼佳子森下理子
 立石凉子★(1951.12.4生、現 立石涼子*2)は竹子の妹・山口文子。
 柿崎澄子(1964.10.4生)は長崎大学医学部附属病院で竹子と同部屋の中学生・藤田早苗。
 長崎の子供たちは、黒崎の小学校の生徒たちであろう。6年(山口学級)の学級委員らしき背の高い短髪の女子など台詞も多く好演しているが、名前は出ていない。
 小沼佳子は高田医院の看護婦、森下理子は竹子の下宿のおばさん役だが、ともに、他に映画やTVドラマに出演していないようだ。
左「山本 圭」右「原崎次郎赤塚真人
 山本圭〈1940.7.1生)は黒崎の高田医院(内科・小児科)の高田医師。
 河原崎次郎(1941.1.18生)は小峰兄妹の父・小峰義治。
 赤塚真人(1951.3.19生)は小学校の半田先生。
 少し空けて、
左上「長門 勇/(特別出演)」右下「曽我廼家五郎
 長門勇★(1932.1.1〜2013.6.4)は田島徹の父・田島勇作。勇作・すみ江夫妻で田島酒店を経営。
 曽我廼家五郎八(1902.2.25〜1998.1.20)は竹子の祖父。
左上「小池朝雄」右下「北林谷栄
 小池朝雄★(1931.3.18〜1985.3.23)は長崎大学医学部附属病院の田浦医師。ラストでは「長崎大学医学部附属病院/第一内科教授室」の主になっている。
 北林谷栄(1911.5.21〜2010.4.27)は主人公兄妹の祖母で、義治の母・小峰キヨ。
 この「キャスト」が映されている間、多島海が写っているが、キャストに次いで中央に「監督 大澤 豊/     (こぶしプロ)」が示された後、下部に明朝体で「長崎県五島/1972年(昭和47年)3月」と場所と時期が示される。
 ある港の、突堤の先に40人くらいの児童が立って、出港して行く船に手を振っている。これに応えて甲板で手を振るのはコートを着た30代の父親と小学生の兄。妹は泣いている。主人公は紺のジーパンに黒の革ジャンのライダー姿で、この様子を同じ甲板から微笑ましげに見ている。少年が主人公について「あれは連合赤軍たい」と言って、浅間山荘事件のテレビ中継に言及するところに時代色を取り入れている。
 この後、物語の主な舞台となる黒崎の小学校で主人公の竹子先生と小峰兄妹は再会するが、6年の担任になった主人公は、転校生の少年を紹介して「信彦君も先生も、同じ五島から来ました」と言っているが、主人公は別の島から乗って来たのである。
 続く「長崎港」の場面で船名が写るが「ましおお」すなわち大島と読める。(以下続稿)

*1:10月21日追記】362頁7行め〜363頁3行め「斉藤とも子」のみ。

*2:2020年12月26日追記】2020年8月2日歿。「朝日新聞」48240号、2020年9月26日付夕刊5面「惜別」欄、「俳優 立石 涼子 さん かれんで達者 愛し愛された」。