瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

大澤豊監督『せんせい』(1)

 昭和58年(1983)8月24日公開。

せんせい [VHS]

せんせい [VHS]

 私は学生時代、流行のドラマを見なかった。有名作家の小説を読まなかったのと同じで、そんなものは私が見なくてもみんな見てるから良いだろう、と思ったのである。TVドラマを見なかった訳ではなく、中学時代は夕方の再放送で水戸黄門明智小五郎を見ていた。高校時代は部活で疲れてしまって帰宅するや牛乳をラッパ飲みして寝てしまったから見る余裕がなかった(しばらく熟睡の後、空腹に目が覚めて遅い夕食を摂る)。大学生になってからもチャンネル権を握らなかったので、流行のドラマを見ることがなかった。チャンネル権があっても見なかっただろうけれども。
 家にビデオデッキはあったけれども、ビデオを借りて見ようとまでは思わなかった。ビデオテープを買った記憶がない。ビデオカメラもないし、そもそも番組をわざわざ録画しようと云う発想が私にも私の両親にも抜け落ちていた。サークルの友人に黒澤明監督『生きる』を借りて、一家3人(当時兄は大学の近くに下宿していた)で見たことが特に記憶に残っているくらいである。レンタルビデオ店も女子高で教えていた頃に、落語を紹介するきっかけに使えるかと思って『タイガー&ドラゴン』のDVDを借りるために初めて会員になったのだが、その後、別の作品を借りることなく、気付いたらその店が廃業していた。図書館によっては、当時既にVHSビデオの貸出を行っていたところがあったようだが、その頃私が通っていた図書館にあったのはカセットテープかCDだった。
 その後、実家を出てから、まづ大学院から貸与されたノートパソコンによってDVDが再生出来るようになり、貸与期間が終了してしばらく後にDVDデッキを購入してからDVDを所蔵している図書館に通うようになり、当ブログで取り上げた映画の殆どは図書館で借りて見た。記事にしていない映画やTVドラマも多いし、若干だがDVDを購入したもの、映画館に見に行ったものもある。ちなみにDVDとBlu-rayは再生出来るがVHSは再生出来ない*1。実家にはDVDとVHSの両方が再生出来るデッキがあるが、相変わらず機械に弱くて、殆ど使っていないようだ。
 かつては洋画もよく見たのだが、字幕を見るのが疲れるので、最近は専ら、忘れつつある子供の頃の情景を確認したくて、昭和50年頃の映画やTVドラマに向いている。少し前までは、こういうものを見ると自分の記憶を違った形に書き換えられてしまうのではないかと怖れて、この頃の映画を見なかった。しかし、忘れてしまうと抵抗がなくなって、それで初めて、『男はつらいよ』シリーズや、大林宣彦の映画を幾つか見たのである。まぁそれより前の市川雷蔵主演の映画や、溝口健二木下惠介の映画も見たのだけれども。しかしこれらは数を見ていないので何かを語れるほどでない。だから『砂の器』にしても『陸軍中野学校』にしても、ごく瑣事に拘った記事を投じるばかりである。
 この映画も、そういう興味から見た。所蔵している図書館も多くないようだし、DVDの商品情報もヒットしない(もちろんAmazonで扱っていない)。人目に触れる機会が少ないと思われるのでDVDパッケージについて、やや詳しく紹介して置こう。
 なお、ネットで検索してみると、子供を集めての巡回上映会で見たと云う人が何人かいた。当時小学生であったらそういった機会に見たかも知れないが、私は昭和59年(1984)3月に小学校を卒業しているので丁度重ならずに過ごしてしまった。
 裏面の上部にあるゴシック体の紹介文。

◇解説                     ロケ地・長崎/103分
 原子爆弾が爆発した当時に爆心地付近にいて、原子爆弾による被害を受けた/人を「直接被害者」という。これに対し、原子爆弾の爆発後から数週間までに、/救護などのために爆心地付近に出入りした結果、放射能を帯びた付近の土壌や/放射性降下物(黒い雨や死の灰など)によって、残留放射線をあびた人を「入/市被爆者」という。入市被爆者は直接被爆していないにもかかわらず、その後/放射線の影響とみられる白血病やガンなどで多くの人が亡くなっている。
 この映画は、原爆の爆発後、放射能に汚染された長崎市内を通り抜けて入市/被爆し、のちに急性骨髄性白血病でこの世を去った元長崎市立山里小学校、山/口竹子先生(享年32)をモデルに、長崎県下オールロケにより制作された。
 監督は「ガキ大将行進曲」「青葉学園物語」の大澤豊。音楽は「若者たち」/「幸福の黄色いハンカチ」の佐藤勝。五十嵐めぐみが竹子先生役を熱演。


 映画『ガキ大将行進曲』『青葉学園物語』もVHSでは発売されているが、DVDにはなっていないようだ。尤も本作もDVD情報は全くと云って良いほどヒットしないのだから、実際のところは分からない。五十嵐めぐみは、母が好きで見ていた天知茂明智小五郎のシリーズに文代役で出ていて、私も中学から帰って夕方に再放送があると母と一緒に見たのだが、五十嵐氏のことは全く記憶していなかった。
 その下、

◇あらすじ
 竹子先生はとても風変わりな先生だった。
 体育の授業では見晴らしのいい丘の上まで一緒にランニングしたり、ドッチ/ボールをすれば生徒より夢中になり、算数の授業では答えのわからない生徒に/手を挙げさせたり、バイクの後ろに生徒を乗せて家庭訪問に行く等…。
 こんな先生だから、子どもたちはみんな竹子先生が大好きだった。
 ある日、いつも元気な竹子先生が白血病で突然倒れた。
 彼女は1945年(昭和20年)8月9日、原爆爆発後の長崎市内を母と妹と一緒に/通り抜けて入市被爆した一人だった。竹子先生は見舞いに来た子どもたちに/爆心地あたりを指し、あの日の長崎を語り始めた。

とある。その下、左に、

◇スタッフ
制作・・・・草場和義
監督・・・・大澤 豊
脚本・・・・関  功
撮影・・・・山本 駿
音楽・・・・佐藤 勝
照明・・・・山本嘉治
録音・・・・高木勝

とあり、その右に

◇キャスト
五十嵐めぐみ  中原 早苗
宮崎 靖雅    赤塚 真人
志喜屋 文    山本 圭
斉藤とも子   河原崎次郎
湯沢 紀保    長門
小池 朝雄    北林 谷栄

とあって、それぞれの1行めの「スタッフ」と「キャスト」は明朝体太字。
 パッケージ背はクリーム色地、最下部はDVD VIDEOのロゴ。

平和劇映画 せ ん せ い ―もうひとつの被爆・入市被爆


 パッケージ表面、最上部に白地に赤の明朝体太字横組み中央揃えで、

長崎から世界の友だちに伝えたい!
平和の尊さ、いのちの大切さを

とあり、草の茂る丘の上で、主人公が手前にあるはずの海の方を指さしと生徒9人(この中に学年の違う少年の妹がいるのは謎)、この写真の右上にゴシック体横組みで、

文部科学省選定
日本映画ペンクラブ特薦
日本PTA全国協議会推薦
優秀映画鑑賞会推薦

右側やや下に黄色の縦組みで、1行めやや小さいゴシック体、残りは明朝体で、

子どもの心に愛と希望、知恵と勇気を!
 たけのこ先生、大好き!
 いつになったら元気にな‥
 せんせいがいないとさび‥

とある(3〜4行めの下部はバーコード貼付のため読めないが、数文字分)。
 下部の白地に「せんせい」に題字、その右上にゴシック体横組みで「ロケ地・長崎/ 103分」、最下部に浦上天主堂の残骸を茶色と黄色で表現し、右下にDVD VIDEOのロゴ。(以下続稿)

*1:まづDVDのみ再生可能で録画の出来ない安物を買ったが、しばらくして買い換えた。