都家歌六『落語レコード八十年史(上)』152〜154頁「二代目三木助の「三年酒」余話」について、1月18日付(06)の続き。
数年前に田端に三代目桂三木助の仲子未亡人を訪ねた折に、「あの録音盤はもうありませんかねえ」と尋ねたところ、しばらくして三代目桂三木助の筆跡で袋の上書きに「家宝」と書いた録音盤が出て来たとて貸与を受け、その白いレーベルに会社名以外の文字が書き込まれていない*1、昭和26年(1951)1月21日の日付印が捺してあるだけのジュラルミンを芯にした78回転のアセテート盤を再生して見るに、B面の終りは噺の途中でプッツリと切れているのであった。
そこで毎月1回NHK青山荘で会合をしていた諸芸懇話会に持ち込んで同人たちの意見を聞いたところ、昭和26年(1951)では二代目桂三木助の没後だから生の放送を録音したものではなく、声も若いから、154頁3〜4行め「当然昭和二年十月発売、ツバメ印ニットーレコードの、二枚続きの前半に/違いない――ということになった。」
そこで二代目桂三木助の「三年酒」の後半を所有している親友の岡田則夫にこの旨を伝えてその盤を借り(154頁下左に「語 落/(三)酒 年 三」のレーベルの白黒写真、すなわち後半のA面)両者の音を繋ぐと見事に結合。三代目桂三木助は昭和26年(1951)当時、NHKの専属であったので、親しい録音技師に頼んでSPレコードを録音盤にコピーしてもらったのだろう、との結論に落ち着いたのである。
そして、初めて完全な形で復刻することの出来た録音テープを、当時、いや現在でも「二代目桂三木助のSP以外では「桂米朝上方落語大全集」(東芝)の第十九集に収録されているのが唯一」であるので、桂米朝に贈って「大変喜んで頂いた」とあるのだが、旧版『米朝落語全集』に、1月14日付(04)のような記述があるのを知ってか、知らずにだったのか、ちょっと気になるところである。(以下続稿)