瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

吹奏樂部の思ひ出(3)

 さて、女子高に勤め始めた当初、これまでの学校での経験から、学校行事には何の興味もなかった。
 1箇月程して球技大会があった。雨天中止の場合は平常授業の予定なので、1時間めに間に合うように出て来たのだが、曇っているがまだ降っていない。雨の予報だが何時降り出すのか分からない。そこで仕方なく登校して、講師室の同僚たちも皆登校していたのだが、中止か決行か、まだ職員室から知らせて来ないと言う。しかし生徒は体操着に着替えて練習などしているので、やるのだろうと思いつつ確証がなくてしばらくうろうろしていたことがあった。結局、飲食店を開業して店主に納まっているベテラン講師が、1時間め開始直前にようやく、校舎内を歩いていた専任教諭を1人呼び止めて決行の旨、聞き出したのだ(どうも、専任教諭たちは既に校舎から離れたグラウンドか体育館に移動していたらしい。専任が講師への連絡を忘れるのも、まぁありがちなことなのである)が、こうなると今日の授業はなくなって、後は講師室で小テストの採点や授業の準備をして過ごすことになって、それもかなり時間が掛かることだから来たことが無駄になったとは思わないのである。しかし、こうなって見ると、しばらく前に体育科の教員から、講師も含めて球技大会への参加を希望するかどうか、確認があったことを思い出して、何だか勿体ないような気がして来たのである。もちろん不参加で回答したのだが、それは講師のうち国語科の同僚2人が、私より年上と云うこともあって不参加で回答していたのに倣ったのだが、これならもう、とにかく球技大会の日には晴雨に関わりなく登校することにした方が天候で気を揉むことがなくって楽なように思えて来たのである*1。――不参加で回答しているから雨降らないのなら来なくても良かったのに、と思うので、雨が降らなかったら球技大会参加、と云うことでいづれにしても来てしまおう、と。
 それから秋に運動会に参加したことも私をして、学校行事は普段とは違った熱気があって楽しい、と云う気持ちになさしめたのであるが、2年めの翌年度に球技大会に参加して、詳細は別に書くことにするが、まだ30代で身体のキレのあった私は二十数年ぶりのドッジボールで年甲斐もなく大活躍し、いよいよ味を占めたのである。
 そして2学期に入ってある日の休み時間、吹奏楽部員が2人、講師室の私を訪ねて来て、定期演奏会の案内を渡して行ったのである。
 もちろん、特別に招待されたのではない。教員は全員、招待券を渡されるので、部員たちは自分たちの授業を担当している教員を分担して、招待券を直接渡す慣習になっていたのである。――だから1年めの昨年度にももらったのだが、行かなかった。そこまでの思い入れがなかったからである。
 しかしこの年は、行こうかと云う気分になった。
 理由の1つは、運動会や球技大会への参加でこういった行事に参加したり見たりするだけでもいろいろ教員らしい充実感が得られることに味を占めたこと、そしてもう1つは、この年度に担当していたあるクラスで、30人しかいない生徒のうち9人までが吹奏楽部員で、他に担当しているクラスにも部員は数人いたから私の担当している生徒の1割以上が吹奏楽部員だったので、これだけいるのなら見に行っても損ではないような、損得の問題じゃないんだが、何だかそんな気がしたこと、――そして、そんなことを考えるうち、何だか、私にはもっと吹奏楽部に、深い因縁があったような、そんな気も、して来たからである。(以下続稿)

*1:一度始めてしまうと少しくらい雨が降っても続行で、昼には雨になったように記憶するが、それで大会が結局どうなったのかは、参加しなかったので覚えていない。