瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

正岡容『艶色落語講談鑑賞』(23)

 2015年8月7日付(22)に、初出の雑誌「あまとりあ」での掲載順を示し、連載の続きに単行本『艷色落語講談鑑賞』に収録されていないものが4話あることに注意して置いた。
 今年度、私は十数年振りに下り電車に乗って通勤することになったので、なかなか都内に出る機会がなく、地下鉄に乗り換えるのが特に面倒なので、まだ1度も国会図書館に行かないままである。貨物列車をよく目にするようになり、朝な夕な、しみじみ旅情を感じるようになった。そんな訳で他の、雑誌を豊富に所蔵する施設にも殆ど出掛ける余裕がなく、雑誌「あまとりあ」を閲覧する機会を得ていない。いや、何処に所蔵されているのかも、実は調べていなかった。
 さて、昨年末より「三年酒」のことを調べるために、ぼちぼち上方落語関係の書籍を借りているのだが、「三年酒」自体が殆ど演じられることのない話なので、当然、書籍にも殆ど取り上げられていないのである。
・豊田善敬・戸田学 編『桂米朝集成』全四巻(岩波書店・四六判上製本*1
【第一巻】上方落語(2004年11月2日 第1刷発行・345頁)

桂米朝集成〈第1巻〉上方落語(1)

桂米朝集成〈第1巻〉上方落語(1)

【第二巻】上方落語(2004年12月3日 第1刷発行・348頁)
桂米朝集成〈第2巻〉上方落語2

桂米朝集成〈第2巻〉上方落語2

【第三巻】上方文化(2005年1月26日 第1刷発行・382頁)
桂米朝集成〈第3巻〉上方文化

桂米朝集成〈第3巻〉上方文化

【第四巻】師・友・門人(2005年2月25日 第1刷発行・466頁)
桂米朝集成〈第4巻〉師・友・門人

桂米朝集成〈第4巻〉師・友・門人

 書影は函。どこかで見た記憶はあるが、私の手許にある某市立図書館蔵書は函が付いていない。このシリーズも、図書館で見掛けると立ち読みをしばらくしてしまうのだけれども、重たいので、これまであまり借りたことがなかった。借りても通読する余裕はないので、先月来ときどき眺めているのだが、やはり「三年酒」に触れているところはないらしいのである(確実に「ない」とは言えないが)。
 本書の由来は、第一巻の前付v頁、桂米朝「はじめに」に、2〜4行め、

 私も長年の間に、著書というものを三十冊くらい出しており、自分でも驚いたが、その他、あち/こちに書き散らした雑文駄文、これはもう数え切れません。と、それらを集めて本にしてみようと/いう御方が現れました。

とあり、第四巻465〜466頁、桂米朝「あとがき」にも、465頁2〜6行め、

 私の古い文章――今までの著作に収録されていないものを集めて本にしたら……と言われて、考/えてみると、あちこちへ書き散らしたものの中にも、ちょっと記録して*2残しておきたいものもある/か、と思って「それも良いでしょう」と言ったら、私自身びっくりするほど出てきました。
 私が完全に忘れていたものもあり、それが案外な量になりました。三冊や四冊には収容しきれな/いときいてますますおどろいている次第です。‥‥

とある。
 この提案をした「御方」が編者の豊田・戸田の両氏で、編者の側の説明は、各巻前付にある、2頁(第一巻vii〜viii頁第二巻v〜vi頁頁第三巻vii〜viii頁第四巻v〜vi頁)の編者「まえがき」の、各巻に共通する最初の2段落に見えている。

桂米朝集成』全四巻は、人間国宝(重要無形文化財保持者)にして文化功労者である落語家・桂米/朝師が、昭和二十年代から現在までに執筆してきた芸能・文化の研究と評論などの著作物から、単/行本未収録分の論考・随筆・対談を中心に、各テーマごとに厳選し構成するものである。
 桂米朝師は、衰退したといわれた上方落語界を、今日のような隆盛にまで導き、再興させた功労/者であることは広く知られている。と同時に、芸能・文化の分野においても、作家・研究家として/活動し、本職の落語におとらず広範で貴重な仕事をされている。落語家としての活動とともに、著/述家としての仕事も、また、文化人・桂米朝の根幹を成していると言えよう。


 以下各巻の編集について説明している。――ここでは「衰退したといわれた上方落語界」に、ちょっと引っ掛かる。「衰退した」のは事実なので「といわれた」としなくても良いだろう。「といわれた」と云うのならここは「滅んだと言われた」とすべきだと思うのだけれども。(以下続稿)

*1:2月19日追記】「 編」が落ちていたのを補った。2月17日付(24)及び2月18日付(25)も同じ。

*2:原文のママ、「記録として」ではないか。