・角川文庫602『秋の日本』(6)
昨日の続き。
「あとがき」の4節め冒頭、253頁6〜8行め
本書の翻訳に当っては、前半の「聖なる町・京都」「江戸の舞踏会」「ぢいさんばあさんの奇怪/な料理」「田舎の噺三つ」を村上が分担し、後半の「皇后の装束」「日光霊山」「サムライの墓に/て」「江戸」「観菊御宴」を吉氷が分担した。‥‥
3月4日付(1)に示したように、「聖なる都・京都」及び「じいさんばあさんの奇怪な料理」は、本文及び目次の題と異同がある。また、前半と後半の境界、本文では「皇后の装束」の方が「田舎の噺三つ」より先に収録されている。
ここで注意されるのは、3月4日付(1)及び3月5日付(2)に列挙した疑問箇所が、94頁と「あとがき」の2箇所を除いて、村上氏の分担箇所であることで、どうも、こういう確認が不得手であったように思われるのである。
4節めの最後、3段落め(254頁7〜9行め)、
本訳書は昭和十七年三月、青磁社から上梓したのであるが、内容については時の情報局からき/びしい干渉を受け、本文中数箇所削除の止むなきに至った。今回角川文庫に収めるに当っては、/もちろん完全な姿に復元し、なお全章にわたってできるかぎり推敲を加えたことを附記しておく。
この青磁社版は未見だが、オークションサイトに上がっていた画像を見るに、馬車と蒸気機関車を描いた開化期の錦絵を使用した装幀で、「目 次」には「聖なる町・京都/江戸の舞踏會/ぢいさんばあさんの奇怪な料理/田舎の噺三つ/神功皇后の御装束/日光靈山/サヒラヒの墓にて/江戸/觀菊御宴」とあって、前記、本書「あとがき」の本文と題が違っている2つは、この青磁社版の題を、「角川文庫に収めるに当って」題を変えたのを忘れてそのまま挙げてしまったもののようである。「皇后の装束」は「時の情報局からきびしい干渉を受け」た一例と云うことになろうか。――「サヒラヒの墓にて」は流石に誤植であろう。(以下続稿)