瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

岡本綺堂の文庫本(11)

・岩井紫妻の「恋」と「死」(2)
 昨日の続き。昨日敬体だった文体が常体になっているのは気分で、深い意味はありません。
 それでは光文社時代小説文庫『女魔術師』177~192頁「岩井紫妻の死」と、中公文庫『怪獣』117~130頁「岩井紫妻の恋」を比較して見る。
 『女魔術師』177頁(頁付なし)は扉で楷書体で題(ルビ明朝体「しづま」)。178頁から本文でまづ3行空けて、3行取りで5字下げでやや大きく「上」とある。1頁16行、1行40字。「下」は185頁9行めから、本文は192頁9行めまでで、最後に2017年4月30日付(04)に引いた、このような検討を始める切っ掛けとなった【編集部註】がある。
 『怪獣』117頁、まづ3行取り1字下げで大きく題(ルビ「いわ い し づま」)、3行空けて3行取り6字下げでやや大きく「上」とある。1頁17行、1行40字。「下」は124頁4行めからで130頁12行めまで。
 まづ、書き出しが異なっている。
 『女魔術師』178頁2行め、

 文政十二丑年の四月、常陸の土浦でこういう顔ぶれの江戸歌舞伎が興行された。*1


 『怪獣』117頁3~4行め、

 こゝに恋をひめて怪しい終りを遂げた若い俳優がある。文政十二丑年の四月、常陸の/土浦で斯ういふ顔ぶれの江戸歌舞伎が興行された。*2

とあって、概要を説明する一文を追加している。
 続いて示される役者8名の番付は同じ。
 さて、ここに『怪獣』の「斯ういふ*3」を『女魔術師』は「こういう」としている。ところが179頁2行めに「こういう」がまた出て来るのだが、『怪獣』の当該箇所を見るに118頁5行め「かういふ」となっている。117頁4行めは「斯」と漢字表記していたのでルビは現代仮名遣いで「こういふ」となり、118頁5行めは仮名表記だから「かういふ」となっているのである。この不統一な按配が私には気持ち悪くて仕方がない。それならいっそ現代仮名遣いで統一した方がマシではないか、と思ってしまうのである。(以下続行)

*1:ルビ「ぶんせい・うしどし・ひたち・つちうら」。

*2:ルビ「あや・おわ・と・ぶんせい・うしどし・ひたち/つちうら・こ」。

*3:ルビ「こ」