私は次の本を読んで、この小説を知った。
・山口昌男『内田魯庵山脈 〈失われた日本人〉発掘』 晶文社・597頁+醱醱鄴頁
- 作者: 山口昌男
- 出版社/メーカー: 晶文社
- 発売日: 2001/01
- メディア: 単行本
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・二〇〇一年三月一〇日二刷・定価6600円
平成15年(2003)6月27日に当時通学していた大学院の最寄駅に近い区立図書館で見掛けて借り、翌28日から読み始めて1日1節ずつ読んで8月7日に読了した。
その数年前、修士論文執筆のため資料を探索するうち、修士論文には全く触れなかったのだが、雑誌「集古」にざっと目を通したことがあった。そこで、私が注目していた人物が集古會に加わる前の時期だけれども、当時覚えた人名も多く登場しているので、興味深く読むことが出来たのだった。
しかし今回、久し振りに読書記録にメモして置いた『内田魯庵山脈』の目次を眺めたのだが、見出しに出ているのに忘れている人物が少なからずいた。
それはともかく、内田魯庵(1868.閏四.五〜1929.6.29)がこの小説のモデルについて述べた「『杏の落ちる音』の主人公」も当時『内田魯庵全集』で読んだのだが、小説の方を読んでいなかった。
と、思う。――『内田魯庵山脈』はかなり集中して読んだのに、これを探さなかったとも思えないので、これもやはりどうしたのか、忘れてしまったのかも知れぬ。
それはともかく、この小説のことなども長らく忘れていたのだが、先月立ち寄った図書館で偶然手にした次の文庫本に収録されていることに気付き、漸く通読することが出来た。筋書きは『内田魯庵山脈』で承知しているはずだのに、随分新鮮に感じられたところからすると、やはり初めて読んだような感じであった。
・岩波文庫31-028-4『風流懺法 他三篇』
・1934年7月30日 第1刷発行(132頁)
・1994年10月6日 第13刷発行・定価398円
「他三篇」の3篇めが「杏の落ちる音」である。
なお、平成前半の事物については、ネット上に余り情報がないのだが『内田魯庵山脈』の中でも特に印象的な(と断言して置こう)この小説についても、殆ど何もなく、小田光雄(1951.5.3生)のブログ「出版・読書メモランダム/出版と近代出版文化史をめぐるブログ」の2014-08-18「古本夜話414 高浜虚子「杏の落ちる音」と内田魯庵「『杏の落ちる音』の主人公」」が詳しいくらいである。
しかしながら、小田氏の記述には幾つか気になるところがある。まづ、
残念ながら、「杏の落ちる音」は文庫には入っていないし、虚子のいくつかの全集か、もしくは各種の「日本文学全集」でしか読むことができない。
とあるのだが、昭和9年(1934)に岩波文庫に収録されていて、平成6年(1994)秋にはリクエスト復刊されているのである。(以下続稿)