・白銀冴太郎「深夜の客」(2)
昨日の続きで、『山怪実話大全』の東雅夫「編者解説」が「奇妙な相似形を成す」とする白銀冴太郎「深夜の客」と杉村顕道「蓮華温泉の怪話」について、確認して見よう。本文は『山怪実話大全』により、一九〇〜一九八頁「深夜の客」を①、一九九〜二〇五頁「蓮華温泉の怪話」を②とする。
話の構成要素に大きな異同はない。いや、会話を中心に展開させているところも同じで、会話の内容や展開に違いはないのだが、わざと手を入れたものの如く、細かいところが違っている。
殆どが会話なので改行が多く、大体は切れ目になるところで行が改められているのだけれども、①か②の一方では改行されている箇所で、一方ではそのまま続けていたりもする。切れ目が同じ行になっている箇所がそれである。これも或いは、意図して段落の分け方を変えたようにも見えるのである。
従って、大筋は全く同じなのだが異同を細かく拾うと全文引用しないといけなくなる。それは面倒なので、差当り構成と対応関係を確認して置こう。それぞれ1行めは題と著者名。①の勘定に入れていない行には2行取り7字下げで「▽」とある。
【A】導入〜場所の説明 ①一九〇頁3〜5行め ②一九九頁2〜4行め
【B】導入〜時期の説明 ①一九〇頁7〜9行め ②一九九頁5〜6行め
【C】男の来訪〜主人との会話
①一九〇頁10行め〜一九二頁3行め ②一九九頁6行め〜二〇〇頁14行め
【D】主人の亡妻と八歳の子供 ①一九二頁4〜5行め ②二〇〇頁14〜15行め
【E】泣き、怯える子供
①一九二頁7行め〜一九三頁7行め ②二〇〇頁15行め〜二〇一頁12行め
【F】吠える二匹の犬 ①一九三頁8〜9行め ②二〇一頁13〜14行め
【G】主人の疑いと行動〜狐・鉄砲
①一九三頁10行め〜一九四頁10行め ②二〇一頁14行め〜二〇二頁6行め
【H】主人の退去依頼と男の退去
①一九四頁11行め〜一九五頁5行め ②二〇二頁7行め〜二〇三頁2行め
【I】巡査の来訪と男の追跡
①一九五頁7行め〜一九六頁3行め ②二〇三頁3〜17行め
【J】巡査による男の捕縛と説明
①一九六頁4〜13行め ②二〇三頁18行め〜二〇四頁8行め
【K】子供の怯えたもの
①一九六頁15行め〜一九七頁16行め ②二〇四頁9行め〜二〇五頁3行め
【L】男の述懐 ①一九八頁1〜7行め ②二〇五頁4〜7行め
これから、注意すべき異同について検討して行くことにするが、その前に、この「奇妙な相似」についての東氏の見解を見て置くこととしよう。(以下続稿)