瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(25)

・白銀冴太郎「深夜の客」(1)
 昨日の続きで、東雅夫が『山怪実話大全』にて新たに紹介した2作品のうち、白銀冴太郎「深夜の客」について。
 『山怪実話大全』の「編者解説」には、当ブログへの言及があるのだけれども、東氏の紹介によってアクセスが増えたのかどうか、よく分からなかった。――松本清張の作品のドラマ化があるとぐんとアクセスが増える*1ので、松本氏の人気の程を改めて感じるのだが、もうそろそろ松本氏の小説のドラマ化は止めた方が良いのではないか。昭和30年代の再現は無理だから現代に移すとして、末端の犠牲の上に隠蔽された真実など、現代でも、いや現代にこそ、幾らでも転がっていそうなものだけれども、ネット上で妙な連中が頑張っている現状では、松本氏の設定を現代の状況にそのまま当て嵌めると“炎上”する恐れがある。マスメディアの腰が引けている、と云うか砕けている現状では、中途半端に作るよりも、やらない方がマシじゃないかと思うのである。
 それはともかく、私はtwitterもやらないし、新刊をチェックする習慣がなくなって久しい*2ので、『山怪実話大全』の存在も、3月になってやっと気付いたような按配なのである。
 そこで初めて、どのくらい『山怪実話大全』は話題になっているのか知らんと検索して見るに、読者の感想の他に「怪談専門誌『幽』」のtwitterアカウントがヒットして、そこにいろいろと編集の途次での発見や、刊行後の反響等についてのtweetがあることに気付いた。そして『山怪実話大全』に関するtweetは、殆どがこの「深夜の客」に関するものなのである。
 従って、以下、検討するに当って、適宜「怪談専門誌『幽』」のtweet、末尾に(雅)とあるのは東雅夫tweetなのだが、これも参照しつつ進めることにする。
 まづ『山怪実話大全』の「編者解説」の当該箇所(二三三頁12行め〜二三四頁13行め)から、その冒頭部(〜二三三頁17行め)を抜いて置こう。

 さて、ここで同じく奇妙な相似形を成すふたつの作品を、お読みいただこう。白銀冴太郎「深夜の客」(初出「サンデー毎日」一九二八年七月二十二日号)杉村顕道「蓮華温泉の怪話」*3(初出『信州百物語 信濃怪奇伝説集』一九三四)だ。
「深夜の客」は、薄田泣菫*4を選者に迎えて開催された「一頁古今事実怪談」懸賞募集の入/選作である。懸賞募集は当時の雑誌の常套手段だが、怪談実話の公募まで実施されていたこ/とに驚かれる向きもあるかと思う。


 「深夜の客」の発見は、2017年9月4日01:03の東氏のtweet*5に写真入で報告されている。頁の右上に横組みで「日毎ーデンサ/日二廿月七年三和昭」とあり、1〜2段めの右端に鳥打帽を右手に持った暗い表情で俯く男性のイラスト、その下、3〜4段め2段抜きで大きく標題*6、右にゴシック体で「薄田泣菫氏選/ 一頁古今事實怪談/  懸 賞 募 集 入 選」、左に明朝体で「越後國高田市馬出町六八、青木方/白 銀 冴 太 郎」とある。
 早稲田大学エクステンションセンター中野校で今年の5月19日から6月16日まで毎週土曜日に開講していた、東雅夫「怪奇の山、夢幻の谷 ― 妖怪と怪談の文学誌」の、第3回(6月2日)が「山の幽霊譚:登山に怪談話はつきものである。妖美な文芸作品から迫真の実話まで。」と予告されており、これを受講していた、さりはま氏のtwitter「さりはまー徒然なる紙魚ー」の2018年6月2日23:26のtweetによって取り上げた作品が分かる。さらに、続く2018年6月2日23:27のtweetにより、「深夜の客」のカラーコピーが配布されたことが分かるが、8段組であるところからして、この号の大きさは2016年8月1日付「赤いマント(151)」に取り上げた「サンデー毎日」第十八年第十三號(37.9×26.1cm)に同じのようだ。戦前の「サンデー毎日」や「週刊朝日」は判型が一定していなかった。
 このさりはま氏の載せた写真により、題の上のカットの他に、3段めから7段めの半ばに掛けて、血を流す女を背に負った男と、その足許で怯えて頭を抱えて泣く子供の、大きなイラストがあったことが分かるが、右下に「せいけん画」とあって、本作のイラストを描いたのは、大阪の画家・藤原せいけん(1902〜1993.8.31)であったことも分かる。当時「サンデー毎日」は大阪の大阪毎日新聞社(大毎)で編集されていた。
 この号に気付いたのは、2017年11月13日23:43の東氏のtweet*7に拠ると、偶然らしい。(以下続稿)

*1:しかし当ブログの記事は「装飾評伝」「鬼畜」についての考察はともかく、それ以外の作品についての多くは文庫版の改版・改装について纏めただけなので、申し訳ないような気分である。

*2:2017年7月4日付「『吉野朔実劇場』(1)」に述べたように、書店に通って新刊案内の類を集めていた時期もあったのだけれども。

*3:ルビ「けんどう・れんげ」。

*4:ルビ「すすきだきゅうきん」。

*5:【2019年8月8日追記】twitter のアカウントを持っていないと時刻が日本時間とは16~17時間のズレがあるとするサイトを参照して、換算していたため「02:03」と誤っていたのを訂正。

*6:ルビ「しんや・きゃく」。

*7:8月8日追記】及び、2017年11月13日23:40の東氏のtweet